2023 Fiscal Year Annual Research Report
農業分野における知的障害者就労の労働の質向上と就労環境整備条件の解明
Project/Area Number |
19K15932
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
中本 英里 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, 研究員 (20824303)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 農福連携 / 障害者雇用 / ユニバーサル農業 / GAP / 業務分担 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「農福連携」の取組実態を調査し、障害者の労働の質を向上させるための条件と、障害者雇用によってもたらされる営農現場への影響を明らかにすることを目的とする。2023年度は、昨年度までに取りまとめたチェックリストをもとに調査票を作成し、現地調査を行うともに障害者の就労環境の実態と経営成果との関連を整理した。事例調査の結果から、農業を行っている事業所では栽培計画から出荷までを利用者で構成される作業班の協働で農業生産活動を完結させる体制を整え、多様な形で障害者が主体性を発揮できる場を創出していた。事業所全体でスキルの底上げを図ったことで地域農家からの信頼が得られるようになり、借地面積を拡大させ、規模拡大へと繋げている事例も存在した。一般就労への移行が目指される就労継続支援事業では、雇用と福祉双方の視点から、障害者の就労能力や適性を評価する仕組みが十分確立されていないことが課題であり、事業所職員の支援の在り方が再検討されている。これに対し、先進事例では、障害者の作業スキルの向上や自主性を高め、主体的に生産活動を行えるような仕組みが確立されつつあることが確認された。 他方、一般就労の事例では、これまでの調査結果により、営農におけるユニバーサルデザイン化やGAP導入が有効であることが明らかとなった。作業工程を整理・細分化し、個々の能力に応じた業務の割当てや作業体制の改善を行い、障害者の業務分担を拡大させることにより、農業経営者の栽培作業時間が減少するなど、経営に良好な影響があることが確認された。個々の障害者の能力を向上させるために、作業遂行程度に応じてステップアップさせる仕組みを構築させること、特に、一般就労では、作業の切出しや作業体制の改善等を意識した「ユニバーサル農業」の取組により、営農における作業能率の向上や収益性の高い事業展開の可能性が広がることが明らかとなった。
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