2019 Fiscal Year Research-status Report
Empirical Comparative Study on the Vision of the Agricultural Revitalization Councils as a Reorganization of Paddy Agriculture Relating to Agricultural Land Utilization
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19K15933
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Research Institution | Agricultural Policy Research Committee, Inc. |
Principal Investigator |
小川 真如 一般財団法人農政調査委員会, 調査研究部, 専門調査員 (60815554)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 水田農業 / 米問題 / 農業再生協議会 / 水田フル活用ビジョン / 産地交付金 / 農地観 / 農業観 / 認識形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、①水田農業再編主体としての農業再生協議会の特徴の整理、②農業再生協議会の水田フル活用ビジョンにみられる農地観・農業観の分析、③農業経営体の分析を通じた、農業再生協議会の限界の析出と政策提案、を実施した。 ①については文献調査及び現地ヒアリング調査、②については郵送アンケート調査、③については現地ヒアリング調査を行った。調査を実施した地域は、①③が東北1県、北陸2県、関東1県、東海1県、中国1県、四国1県、九州2県の計9県、②が47都道府県および1,471地域である。 農業再生協議会に対しては、議事録の整理や関係者に対するヒアリングを通じて、水田フル活用ビジョンの作成に当たっての合意形成過程を分析し、農業再生協議会における農地観・農業観がいかに認識形成されたのか分析を進めた。 農業経営体への調査では、基礎的な農業経営分析を踏まえながら、農業再生協議会と個別経営の、それぞれの農地観・農業観のズレに着目して分析を行った。 全体を通して、農業再生協議会の取り組みが水田農業経営体の制度的環境に影響を及ぼすことが明らかになった。また、水田フル活用ビジョンや産地交付金の設定については、高収益作物の導入をはじめとした経営改善への貢献のみならず、煙害の防止等の地域社会の課題解決に貢献していることが明らかとなった。一方、農業再生協議会の事務負担の増加傾向と課題が明らかになったほか、2018年度の米政策の変更や、都道府県や地域の裁量を認める現行政策について、制度設計と実態には矛盾があることも明らかになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第1に、研究計画で予定した調査対象について、計画以上に多大な協力が得られたことが理由である。実態調査については、調査対象者にさらなる調査対象者の紹介を快諾してもらう等、実態解明に向けて調査計画をより深いものへと再設計することが可能となった。各地の調査データを収集できるとともに、研究費を計画的・効率的に活用できた。 第2に、研究成果の取りまとめとその報告が予定以上に進んだことが理由である。有益な知見が数多く得られたことを踏まえて、随時、研究成果を学会等にて報告し、助言・批判を受けることができた。研究成果は、書籍1冊、学会報告4回(うち、1回は新型コロナウイルスの発生状況により延期)、論文投稿した。このうち、論文の投稿は9本行った。5本が掲載済み、4本が査読中である。 加えて、基調講演の依頼を2回受けたほか、「研究成果」には記載していないが、令和2年度以降に公表される原稿について2件の依頼を受けた。 全体を通して、調査分析の実施と、研究成果の公表について、これらを両輪としてバランスを保ちながら進捗することができ、研究期間の初年度としては、多くの調査研究実績を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、令和元年度の研究成果を受けて、さらなる調査研究活動を遂行していく。 本研究課題の研究期間である3カ年の中間年として調査研究の蓄積とともに、最終成果を見据えた中間とりまとめを実施する。具体的には、研究内容のパート別に大きく3つの中間とりまとめを実施してそれぞれ公表する準備を行う。この中間とりまとめは、最終年度である令和3年度の研究活動につなげるものであるとともに、今後の研究遂行に資する人脈構築も狙いである。以上の調査研究活動に際して、実証的研究の前提となる理論的整理も令和元年度と同様に継続して実施する。 今後の研究の推進方策に関して研究設計上の障壁は特段ない。ただし、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響が憂慮される。新型コロナウイルスの国内流行状況に対する懸念については、令和2年2月15日に対策検討(第1回)を実施し課題を洗い出し、令和2年3月25日の対策検討(第2回)では、緊急事態宣言や都市封鎖等を想定した上で、各フェーズ別に研究遂行上の対応策を立案した。令和2年3月31日の対策検討(第3回)では現状の評価を行い、新型コロナウイルスの国内流行状況について、本研究課題の調査研活動(研究調査実施、研究成果の作成・公表)に与える影響は、無視できないものの、研究計画の中断や大幅な変更を伴うほど甚大なものではない、と評価している。なお、新型コロナウイルスの国内流行によって本研究課題の遂行に支障をきたさぬようにするために、引き続き流行状況や社会経済状況をみながら、対策検討を随時実施することとしている。
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Causes of Carryover |
口頭報告を予定していた学会について、新型コロナウイルスの発生に伴い、翌年度に延期となったため、当年度の学会参加費・旅費が不要となった。
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