2019 Fiscal Year Research-status Report
積雪寒冷地における気候変動下の農地土壌物理環境予測:津軽地域のリンゴ園を対象に
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19K15934
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
加藤 千尋 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (60728616)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 気候変動 / 土壌水分 / 地温 / 土中CO2濃度 / 数値計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動が作物生産におよぼす影響把握と適応策,緩和策の検討は喫緊の課題である.冬季の2~3℃の気温上昇や降水パターンの変化は,積雪寒冷地においては根雪の期間や融雪の時期を変化させ,冬季~春季の土壌水分・温度状態,土中の生化学反応・物質動態に影響を及ぼす.土壌水分や地温などの土中の物理環境は,作物生産環境として重要である.そこで本研究では「気候変動下において,積雪寒冷地では積雪や融雪の時期,量が変化することによって,農地土中の水移動・熱移動にどのような影響が及ぶか?また,土壌物理環境の変化に伴い,有機物分解速度がどのように変化するか?」を明らかにすることを目的にしている. 本研究では,最終的に将来の気候予測値を境界条件とした土中水・熱・CO2移動予測計算を行い,気候変動下の土壌環境(土壌水分,地温,およびCO2濃度)の検討を行う.そのために,まずは対象地において,土壌水分,地温,土中CO2濃度の連続モニタリングを行い,数値計算の検証データとする.数値計算モデルはHYDRUS-1Dをベースとし,計算値と実測値を比較してモデルやパラメータのチューニングを行う. 当該年度は,青森県弘前市近郊の弘前大学藤崎農場内のリンゴ園において深さ15cmおよび深さ40㎝における土壌環境のモニタリングを行った.また,HYDRUS-1Dモデルを用い,土中の水・熱・CO2移動予測の数値計算を検討した.数値計算においては,境界条件にAMeDASの気象データを用いた.また,土壌の水・熱移動特性関数(パラメータ)は,農研機構によって公開されている日本土壌インベントリーのデジタル土壌図と農地土壌の物理性データベースに基づいて決定した.土中の連続モニタリングによりデータを蓄積し,モデルやパラメータの修正を継続している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
青森県弘前市近郊の弘前大学藤崎農場のリンゴ園において,深さ15cmおよび深さ40cmにおける土壌水分・地温・土中CO2濃度のモニタリングを行っている.土中CO2濃度は,既往の研究に従って,シリコーンシートで作成したガス透過性チューブに非分散型赤外線吸収式CO2濃度センサを封入したものを土中に埋設した.また,クロスチェックのため同じ深さにガス採取管を埋設し,適宜土壌ガスを採取し実験室において定量した. 続いて,現在(過去)の気象データを基に土壌水分・地温状態,土中CO2濃度を数値計算によって再現を試みた.ウェブ上で公開されているデジタル土壌図や土壌物理性データベースを用いてパラメータを決定し,これらを用いてHYDRUS-1Dモデルによって土中の水・熱・CO2移動計算を行った.そして先のモニタリングで入手した実測の土壌水分・地温,土中CO2濃度データを用い,モデルとパラメータの検証を行った.概ね計画通りである.
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Strategy for Future Research Activity |
引きつづき対象地における土壌環境モニタリングを継続し,検証データを蓄積し,モデルやパラメータのブラッシュアップを図る.特に,冬季から春季の積雪,融雪の時期の土壌環境の再現精度向上を目指す. モニタリングと並行して将来の気候予測値のデータセットを準備する.対象とする農地土壌における水・熱・CO2移動現象と気候予測値の時空間スケールを同等とするための時空間ダウンスケーリングを行う. その後,準備した将来の気候予測値を境界条件とし,気候変動下の土壌水分・地温状態,CO2動態予測計算を行う.
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