2019 Fiscal Year Research-status Report
傾斜農地での耕作放棄による水文環境への影響評価と地すべり対策の検討
Project/Area Number |
19K15936
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
長野 峻介 石川県立大学, 生物資源環境学部, 講師 (90646978)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 耕作放棄 / 水文モデル / 地下水 / 傾斜農地 / 棚田 / 土砂災害 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,中山間地域で耕作放棄地が拡大しており,地すべりが多発する危険地域(地すべり地域)内の棚田などの傾斜農地ではより一層深刻な状況である.耕作放棄により農地では降水の地下浸透量が増大するとされており,傾斜農地での影響評価が急務である.本研究では,耕作放棄された傾斜農地での地すべり対策を検討することを目的として,傾斜農地において耕作放棄による水文環境への影響について,現地観測と水文モデルによるシミュレーション解析によって定量的な評価を行った. 本研究の研究対象地とした傾斜農地では,地すべり対策工事が行われており,工事に伴い休耕された農地がある.現地で観測された降水量や地下水位のモニタリングデータを用いて,地すべり対策工事や休耕が地下水位や降水の地下浸透に及ぼす影響を分析した.地すべり対策として水抜ボーリング工の施工により地下水位が低下した一方で,休耕された農地では降水の浸透速度が上昇していた.休耕による田面の変化が地下浸透に影響を与えたことが推測され,耕作放棄地でも同様の影響があると考えられる. また,水文モデルによる解析では,既往の分布型流域水循環モデルに耕作放棄地用のパラメータを新たに追加し,モデルの適用領域において傾斜地の水田を耕作放棄地に設定し,1年間の解析を行った.また,豪雨データを作成し,短期的な豪雨が耕作放棄地に与える影響を評価した.解析結果から,耕作地から耕作放棄地に変わることで,長期的には灌漑されなくなることで地表浸透量は減少し地下水位は低下していた.短期的な豪雨では地表浸透量は増加し地下水位が大きく上昇することを確認した.耕作された農地では豪雨でも田面に溜まった水は排水路に速やかに排出されるため,地下水位の上昇が見られなかった.これらの結果から,中山間地域での耕作放棄が傾斜農地の地下水文環境に影響を及ぼし,地すべりなどの土砂災害の発生が懸念される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,耕作放棄された傾斜農地での地すべり対策を検討することを目的として,傾斜農地において耕作放棄による水文環境への影響について,現地観測と水文モデルによるシミュレーション解析によって定量的な評価を行った. 【傾斜農地における水文環境の現地観測】現地観測として,石川県津幡町の傾斜農地を研究対象地に選定し,現地で観測された降水量や地下水位のモニタリングデータを用いて,地すべり対策工事や休耕が地下水位や降水の地下浸透に及ぼす影響を分析した.降水量や地下水位のモニタリングデータは石川県県央農林総合事務所土地改良部から提供を受けてデータ分析を実施することができ,有用な知見が得られた. 【傾斜農地水文モデルを用いた地下水流動および地下水位の解析】既往の分布型流域水循環モデルに耕作放棄地用のパラメータを新たに検討し,耕作放棄による傾斜農地での水文環境への影響を評価する水文モデルの構築を行った.モデルの適用領域において傾斜地の水田を耕作放棄地に設定し,1年間の解析を行った.また,豪雨データを作成し,短期的な豪雨が耕作放棄地に与える影響を評価した.水文モデルの適用領域の修正や,各種パラメータやモデルの構造についてさらに詳細な検討は必要であるが,水文モデルの構築を概ね順調に進めることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
傾斜農地における水文環境の現地観測では,観測項目を増やし降水の表面流出量などの現地観測を行う.さらに,土壌調査により各種土壌物理性(乾燥密度,飽和透水係数,水分特性曲線)を調べ,耕作放棄地での耕作放棄後の土壌や植生の変化を詳しく調査する.また,水文モデルを用いた地下水流動および地下水位の解析では,水文モデルの適用領域の修正や,各種パラメータやモデルの構造について詳細な検討を進める.さらに,現地観測による水文環境の分析結果及び傾斜農地水文モデルによる解析結果を踏まえて,研究対象地周辺での地すべり発生状況の情報を収集し,耕作放棄による地下水位上昇が地すべり関して斜面の安全率等に与える影響の分析を行う.
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Causes of Carryover |
石川県県央農林総合事務所の協力により当初の予定より使用額を少なく現地観測を実施することができた.ただし,次年度では調査対象地を広げ,現地観測での観測項目を増やす必要があり,次年度で当該助成金を使用予定である.
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