2019 Fiscal Year Research-status Report
微生物生態学的アプローチによる堆積物微生物燃料電池がもたらす底質改善機構の解明
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19K15938
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
竹村 泰幸 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 特別研究員 (10837199)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 底質改善 / 微生物燃料電池 / メカニズム解析 / 微生物生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、堆積物微生物燃料電池(SMFC)の底質への適用時における酸化還元電位の上昇(嫌気的雰囲気の緩和)、硫化水素濃度の抑制、リンの溶出抑制といった底質改善効果のメカニズムの解明である。具体的にはSMFC適用時の底質への物理化学的影響、発電微生物や底質改善に関わる微生物の多様性などを統合的に解析し、発電と底質改善効果の因果関係を明らかにするための基礎的な知見を収集する。 そこで本研究では、海域・河川・淡水湖沼・公園池から採取した複数種の底質を対象にした底質の違いによる比較と、それぞれの底質に対してSMFCとして稼働している状態(閉回路)と非通電状態(開回路)の発電の有無による比較を行った。実験装置は底泥中に3枚の板状のアノード(電極)を並列に貫入できるようにし、そのうち2枚の中央には予め底質間隙水が採取可能なサンプリングポートを設けることで定期的に間隙水を採取できるようにした。 閉回路の装置では全ての底質で結線直後から発電することが確認できた一方、底質の違いにより発電量が異なったり、発電量の増加にかかる時間に明確な差があることが明らかとなった。また、閉回路と開回路の両者について電極の電気化学的特性を測定したところ、全ての底質で起電力や内部抵抗に差が生じてくることがわかった。 底質間隙水中リン濃度については、特に初期濃度が高かった海域と淡水湖沼の底質では、通電開始から一ヶ月程度で閉回路と開回路に差が生じ始め、SMFCによる底質間隙水中のリン濃度の低減効果が確認できた。同様に硫化水素濃度やORPについても差異が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数種の底質の準備、実験装置の設計・施工、装置の稼働及び発電量と水質モニタリングが開始できており、当初の予定通りおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
実験装置の運転及び発電量と水質の変化、電極の電気化学的性質の変化をモニタリングする。また、マイクロセンサーによる底泥表層における酸化還元電位等を測定することで、電極による底質への物理化学的影響を評価する。また、16S rRNA遺伝子を標的とした網羅的微生物相解析を実施し、発電微生物や底質改善に関わる微生物の探査を行う。これらの結果を統合的に判断することで、発電と底質改善効果の因果関係を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に微生物解析実験を部分的に行う予定であったが、試料準備の調整のため計画を一部変更し、次年度にまとめて微生物解析実験を行うこととしたため、未使用額が生じた。
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Research Products
(2 results)