2021 Fiscal Year Research-status Report
加工操作による農産物内在ペクチンのグローバル構造変化
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19K15945
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
今泉 鉄平 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (30806352)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ペクチン / 低温ブランチング / メトキシル化度 / FT-IR / ICP-AES / イオン漏出 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、加工操作によってペクチンの性状が変化することが明らかとなり、加熱時に引き起こされる細胞膜損傷がトリガーとなる可能性が考えられた。今年度は、細胞膜損傷に伴うイオン漏出現象について把握を試みた。温湯処理時の浸漬液の電気伝導度度測定を行ったところ、細胞膜損傷が促された条件において浸漬液の電気伝導度上昇が確認された。さらに、ICP-AESを用いて試料中のイオン濃度(K, Mg, Ca)を測定したところ、電気伝導度増加が確認された条件でこれらのイオン濃度の低下がみられた。したがって、細胞膜損傷に伴うペクチン性状の変化について、細胞膜からの漏出イオンが細胞壁領域でのペクチン分子や関連酵素に干渉した可能性が示唆された。また、フーリエ変換赤外分光光度計を用い,水溶性(WSP),キレート可溶性ペクチン(CSP)抽出画分の構造解析を試みた。各抽出画分を凍結乾燥させた粉末をKBr錠剤法により調整し測定した。それぞれのスペクトルにおいて、分子内および分子間水素結合に関与する遊離ヒドロキシ基の伸縮振動に起因する3300~3500cm-1のピークと、CH2のC-H伸縮振動に起因する2930 cm-1付近のピークが認められた。また、メチルエステル化されたカルボキシ基(COOCH3)に対応する1740cm-1付近のピークと、遊離カルボキシ基(COO-)の伸縮振動に対応する1600 cm-1付近のピークから、メトキシル化度(DM)を計算したところ、WSPではCSPよりも高い値を示した。温湯処理によるDMの変化はCSPでより顕著に表れた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、加工操作によるペクチンの化学構造変化についての把握を行ったうえ、細胞膜損傷に伴うイオン漏出についても新たな知見を見いだせた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、原子間力顕微鏡を用いたナノインデンテーションを細胞壁に対して行い、細胞壁物性の変化についての把握を試みる。また、分子量分布の測定なども含めて、引き続き分子構造変化の調査を進め、ペクチン性状変化と細胞壁物性の関係を明らかにしていく。
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