2019 Fiscal Year Research-status Report
磁場を利用した非接触型オートラジオグラフィ技術の開発
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19K15947
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
栗田 圭輔 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究職 (10757925)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オートラジオグラフィ / 植物 / RIイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
オートラジオグラフィ法は、放射性同位元素(RI)を含む試料をイメージングプレート等に密着させ、その濃度分布を可視化する手法である。この手法は植物研究分野においても広く利用されているが、厚みや複雑な構造を持つ被写体を撮像する場合、イメージングプレートへの接触がうまくできず像がぼけてしまっていた。本研究ではこの問題を解決するため、試料とイメージングプレートとの間に距離がある場合でも感度や分解能が低下しないオートラジオグラフィ技術の開発を行う。具体的には、RIが放出するベータ線の進行方向を磁場で制御する。磁場中の荷電粒子は磁力線に沿って螺旋運動するため、これを利用することで、試料とイメージングプレートとの距離が離れている場合でも、分解能の低下を抑制できる新しいオートラジオグラフィ技術を実現させる。 本年度は、まず、Cs-137点線源とイメージングプレートとの間の距離や、磁場の強度を変化させた場合、点線源の投影像がどのように変わるかをモンテカルロシミュレーションコードPHITSにより調べた。また、磁場の強度が異なる磁気回路を複数作成した。本技術の実証のため、作成した磁気回路を用いて3cm離れたCs-137点線源を撮像した。その結果、イメージングプレートへの投影像のぼけは、ラーモア半径程度であった。以上のことから、イメージングプレートと密着できない複雑な構造を持つ試料でも、本技術を用いることで分解能を落とさず撮像可能なことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度においては、当初計画どおりにオートラジオグラフィ技術を実現するために必要となる条件の検討・最適化を行い、最適な磁場を実現するための磁気回路の設計と試作開発を行った。また、試作開発した磁気回路の実証試験にも成功したことから、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に得られた試作開発した磁気回路の実証試験データや磁場中の粒子の動きを得るシミュレーション結果を基に、オートラジオグラフィ技術の空間分解能や放射能の測定下限値に係る性能評価を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により令和元年度に予定していた出張が中止になったこと、及び当初予定していた荷電粒子の軌跡を解析するソフトウェアの購入が既存ソフトウェアのアップデートで代替が可能となり不要となったことから次年度使用額が生じた。 次年度使用額は令和2年度分経費と合わせて性能評価等のデータ解析用ワークステーションの購入費として使用する。
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