2020 Fiscal Year Research-status Report
熱帯の火山灰土壌における簡易リン肥沃度評価方法の構築とジャガイモ生産性の向上
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19K15948
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
木下 林太郎 帯広畜産大学, グローバルアグロメディシン研究センター, 助教 (70793678)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 有効態リン酸 / リン固定力 / リン酸吸収係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度末にケニア共和国で開始予定であったケニア農業・家畜生産研究センターティゴ二支所におけるリン酸肥料および家畜ふん尿を施用したバレイショの圃場試験を行う予定であったが、COVID-19の影響によりケニア共和国への渡航ができなかった。2020年度は既に採取済みの土壌試料について、土壌のリン固定力の簡易分析方法の実証を行った。本研究者は、土壌の風乾土含水率を評価することによるリン固定力の推定法を開発した(木下・谷 2020)。ケニア共和国キアンブ県のバレイショ生産圃場26地点から採取された土壌試料に関しても、風乾土含水率を用いることで、リン酸吸収係数の推定が一定程度可能であることが明らかとなった(R2=0.65;RMSE=78.9)。また、ドローン搭載の近赤外域の反射率を用いたリン酸吸収係数の推定を実験室内で行ったところ、高い精度で推定が可能であることが明らかとなった(R2=0.75;RMSE=66.3)。研究対象地域内にはいくつかの土壌タイプが存在すると考えられており、土壌タイプごとにリン酸吸収係数と風乾土含水率および近赤外域の反射率との間の関係性が異なると考えられた。土壌タイプの分類を行うために、X線回折法による粘土鉱物組成の評価を実施した。当該地域内の3地点で行われた土壌断面には地点により異なる粘土鉱物が含まれていた。2020年度の研究から、既に取得済みの土壌試料に関して、リン酸吸収係数の簡易推定法が適応可能であることが実証された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
土壌のリン肥沃度を評価するためには土壌のリン固定力の評価が重要である。リン固定力の強い土壌は、施肥されたリン酸の多くが土壌に固定され作物へのリン供給力が低い。現状では、リン酸吸収係数やP Retention(ニュージーランド法)の分析により評価されている。しかし、これらの分析は専門知識が必要なこと、様々な試薬が必要なこと、高価な分析機器が必要なことなど現地での評価は難しい。本研究者は、北海道の普通畑土壌において、土壌の風乾土含水率を評価することでリン酸吸収係数の推定が可能なことを示してきた。本研究で採取された土壌について風乾土含水率によるリン酸吸収係数の推定を行ったところ、ケニア共和国キアンブ県の土壌試料に関して一定程度推定が可能であることが明らかとなった(R2=0.65;RMSE=78.9)。また、有効態リン酸の簡易推定法も本研究の一環として既に確立されている。この方法は抽出液に酢酸を利用し、抽出時間5分、発色液に長期保存可能なモリブデン黄法を利用する方法である。本研究プロジェクトにおいて、リン酸吸収係数および有効態リン酸の分析の簡易法を開発することができた。これらの分析法が現地で使用可能か検証する必要がある。また、当該地域では土壌の有効態リン酸が過剰な地点から不足な地点まで様々である。適切なリン酸肥料の施用量を明らかにするための圃場試験を今後行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度実施予定であった、ケニア農業・家畜生産研究センターティゴ二支所における圃場試験を実施する必要がある。世界的なCOVID-19の情勢次第であるが、2021年度もケニア共和国への渡航および現地での圃場試験の設置は難しい可能性がある。その場合は、現地の研究者とオンラインで会議を行い、既に確立済みの有効態リン酸およびリン酸吸収係数の簡易推定法の現地での実証試験を依頼する必要がある。また、圃場試験も可能であれば現地研究者に開始してもらい、COVID-19の情勢を鑑みて収穫段階等で訪問することも視野に入れる予定である。2021年度はケニア共和国・キアンブ県のバレイショ生産圃場における土壌断面形態および分類について学術論文として発表する予定である。有効態リン酸およびリン酸吸収係数の推定に関しては試料数が限られているため、推定精度の信頼度が低い。可能であれば、キアンブ県内の他の生産者圃場から採取された土壌試料や他県の試料も含めて推定モデルの構築を行う必要がある。これも、ケニア共和国への渡航が難しい場合は、現地研究者に土壌試料の採取を依頼する予定である。輸入された試料に関して、推定モデルの適応が可能かどうか検証し、結果を学術論文にまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、ケニア共和国への渡航が出来なかったため、現地試験場における圃場試験および試料の採取を行うことが出来なかった。次年度はこれらの現地調査を実施する予定である。
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