2019 Fiscal Year Research-status Report
ブタの精漿が子宮の局所免疫および全身免疫に及ぼす影響と受胎性に関する研究
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19K15963
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
奥山 みなみ 大分大学, 医学部, 助教 (50756781)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 豚 / 受胎 / 精漿 / 免疫 / 子宮内膜 / 末梢血単核球 |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠の成立・維持には母体が非自己である胚を受け入れる必要がある。そこで子宮では、母体免疫が攻撃性と寛容性のバランスを保ち維持される。近年、精漿中のタンパク質が交配時に子宮内膜に作用し、子宮における免疫機能を調節し受胎性に関与することがわかってきた。そこで本研究では、精漿を利用したブタの繁殖成績の向上を目指し、精漿がどのように子宮に作用し受胎性を向上させるのか、その免疫系の制御メカニズムを明らかにすることを目的とする。本研究では(1)発情~受胎成立における全身性の免疫変化、(2)子宮内膜細胞の培養系における精漿への局所応答、を調べ、最終的に(3)生体への精漿投与によりおこる局所および全身の免疫反応を繁殖成績とあわせて評価する。 豚の精称が、繁殖成績や子宮の免疫機能にどのような影響をあたえるかについては未だ未知な部分が大きい。国外では人工授精時に精漿を子宮内に投与することで、受胎率、出産率あるいは産子数が向上することが報告されている。また、精漿添加が引き起こす子宮内膜の増殖因子の変化なども報告例がある。しかしながら、生体における受胎の有無や産子数の増減と精漿の影響、子宮での免疫変化を絡めて精査した報告はこれまでに存在しない。本研究の結果は、精漿が子宮の免疫動態におよぼす効果とその機序を知る足がかりとなり、基礎繁殖学分野の発展に寄与することが期待できる。さらには、その機序のどのような異常が不受胎さ産子数低下を招くのかを明らかにできれば、新たな不妊治療の開発や家畜の生産成績の向上につなげることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で確立した、子宮内膜細胞の培養系を用い、in vitroにおいて様々な条件下で精漿にどのような反応を示すのかについての実験を進めている。また、生体から末梢血単核球(PBMCs)を単離し、繁殖周期および受胎初期におけるリンパ球の動態を評価する実験を進めている。研究は概ね順調に進展しており、今後結果の解析を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進めているin vitroの実験系では、子宮内膜上皮細胞、子宮内膜間質細胞、末梢血単核球のそれぞれ単離培養を進めると同時に、これら細胞を組み合わせた共培養の実験系も行っていく予定である。それぞれの培養条件検討を進めるとともに、精漿暴露による影響を評価する。また、同時にin vivoの実験系も進めていく。通常の発情周期中のリンパ球の動態を調べるとともに、初期妊娠時における変化を明らかにすることで、受胎成立のメカニズムの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
研究計画は概ね順調に進めることができた。一方で、研究初年度には培養実験および生体を用いた実験にかける時間を多く割いたため、解析等のより高コストの実験を次年度に実施する予定とした。次年度には解析のための試薬あるいは受託に繰り越し予算を用いる予定である。
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