2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K15967
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
井上 弘貴 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 特任研究員 (20807812)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生殖細胞 / GS細胞 / 精子発生 / RNA結合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
精子幹細胞を含む精原細胞集団の維持、分化制御は精子生産能力に直結する重要な機構である。NANOS3はNanosファミリーに属するRNA結合タンパク質であり、NGN3陽性細胞で発現することが分かっている。これまでの申請者らの解析から、精原細胞におけるNANOS3の欠損は未分化型精原細胞の分化を促進する転写因子STRA8の発現上昇およびNGN3陽性細胞の減少を引き起こすことが分かっている。そのため、NANOS3はNGN3陽性細胞の分化の抑制を行うことで未分化型精原細胞の適切な増殖に寄与していると考えられる。しかしながら、生体内では未分化型精原細胞は少数しか存在しておらずNANOS3の分子機構についての解析は容易ではなかった。本研究ではこの問題を解決するために、NANOS3欠損GS細胞を用いNANOS3の分子機能解析を行う。 昨年度までに、4-OHTの添加によりNANOS3を欠損するGS細胞を樹立し、解析を行った結果、NANOS3欠損GS細胞では増殖速度が著しく低下した。また、生体内と同様STRA8の発現が上昇していることが確認されたことから、生体内での結果と同様、NANOS3はGS細胞においても分化を抑制する機能を有することが示唆された。また、NANOS3の相互作用因子の探索により、すでに相互作用が報告されているCNOT複合体の他、いくつかの候補因子を同定した。 本年度はさらに、NANOS3欠損による影響を詳細に解析するため、RNA-seq解析を行い、NANOS3欠損GS細胞における遺伝子発現様式を明らかにした。またNANOS3に対するRIP-seq解析を行い、NANOS3の標的RNAの候補についても解析を行っている。NANOS3の相互作用因子に関しても、mRNAの保存もしくは翻訳抑制にかかわる因子がNANOS3と結合することを見出し、GS細胞における機能の解析を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年次計画通り、RNA-seq解析及びRIP-seq解析を行った。現在はデータの解析を行っており、昨年度までに解析したNANOS3欠損GS細胞の表現型に関与するような遺伝子発現の変化がNANOS3欠損の直後に起こっていないか精査を行っている。 また、並行して行っている計画として、昨年同定したNANOS3相互作用因子の候補の絞り込みを行った。当初質量分析により同定していていた多数の候補の中から、まずは特定の塩基配列に結合するRNA結合ドメインを持つものに着目して解析を行い、2つのタンパク質が実際にNANOS3と結合していることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度まで、おおむね計画通り進行しているが、RNA-seq解析、および相互作用因子の機能解析において多少の遅れが見られた。今後は、昨年度に得られたRNA-seq、RIP-seqの結果からNANOS3欠損GS細胞において、どのような現象が起きており、欠損GS細胞の表現型につながっていくのか評価を行いたい。また、同定した相互作用因子は特定の塩基配列に結合するタンパク質であることから、NANOS3の標的RNAに対する結合能に影響していくのかについても解析を行い、NANOS3欠損細胞の表現型とどのように関連していくのかについて調べていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、移動を伴う活動が制限されweb会議に移行したため、旅費がほとんどかからなかったため。また、本年度中の成果発表ができす、次年度に追加実験にかかわる物品、学会発表、論文投稿費などを支払う必要が出てしまったため。
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Research Products
(2 results)