2021 Fiscal Year Research-status Report
ニホンジカ寄生住肉胞子虫の下痢毒性因子の検出および毒性機序の解明
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19K15974
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
山崎 朗子 岩手大学, 農学部, 助教 (30648358)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 住肉胞子虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
Sarcocystis属は新規性の食中毒危害性原虫として知られるようになった。さらに、昨今ではシカ肉喫食による有症事例も発生している。しかし、その発症メカニズムは不明であるため、本研究では、馬およびシカに寄生するSarcocystis spp.の食中毒原因因子の探索を試みた。 カナダ産ウマおよび岩手県のシカから採取したS. fayeri およびSarcocystis sp.を単離し、10^3~10^7ブラディゾイト/loopをウサギ腸管ループテストに供試した。また、ブラディゾイトをゲルろ過クロマトグラフィーにて分画し、>50kDa、50~19kDa、25~15kDa、15kDa>の4分画をウサギ腸管ループテストに供試した。評価は、FA値(ループ内容物g/ループ長㎝)で示した。 その結果、S. fayeriは4℃、-20℃、-80℃で保存した場合、4℃で保存した10^3、10^5の投与、シカ由来のSarcocystis sp.では10^7の投与で高いFA値と出血を示した(0.58、0.67、0.164;陰性対照0.07)。ゲルろ過クロマトグラフィーにて分画したタンパク質を投与した結果は、S. fayeri、Sarcocystis sp.のどちらも、50~19kDaの分画と、25~15kDaの分画を投与したループに液体貯留を認めた(FA値0.3、0.2;陰性対照0.07)。アミノ酸配列を解析した結果、19kDaのタンパク質がPutative Histamine releasing factor(pHRF:ヒスタミン放出因子)と同定された。 Sarcocystis属の腸管毒性は-20℃、-80℃の冷凍処理で失われるが、最小発症ブラディゾイト数や、出血の有無など、種によって異なる病原性を持つことが確認された。また、ヒスタミン放出因子(pHRF)が腸管毒性候補である可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス蔓延の理由もあり、採材協力者の狩猟従事者達が当初の計画の頻度で捕獲に行けなかったことと、住肉胞子虫高濃度寄生の鹿肉がなかなか発見されず、トータル的にシカ肉のサンプル数が少なかった。そのため、コンスタントに購入できる馬肉に寄生する同属であるSarcocystis fayeriを用いて毒性解析を進めた。当初の計画ではvivo試験とvitro試験を並行に行ってから標的タンパク質の同定を次年度に行う予定であったが、実際はvivo試験と同定を今年度に行い、vitro試験は次年度の課題となった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の遂行予定であった部分の実験をすすめ、計画予定の遂行に努める。 鹿肉試料の入手が少ない場合は、馬肉を購入してウマ寄生性のSarcocystis原虫を用いて研究を進めていく。大きな研究計画変更はない。
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Causes of Carryover |
サンプリング計画の依頼および試料採取のため、各地へ研究打ち合わせを兼ねて出張する予定であったが、感染蔓延防止のため活動自粛になり、計画よりも少ない出張となった。合わせて研究試料数も大幅に減ったため、旅費および物品費の支出が減った。 サンプリングが次年度にずれ込んだため、今年度使用予定であった旅費・物品費は実験経費として次年度に使用する予定である。
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