2020 Fiscal Year Research-status Report
皮膚メモリーT細胞の駐在機構解明に基づく犬アトピー性皮膚炎治療への応用
Project/Area Number |
19K15980
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
朝比奈 良太 京都大学, 医学研究科, 特定研究員 (00837487)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 組織常在型メモリーT細胞 / アトピー性皮膚炎 / 真皮樹状細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、アトピー性皮膚炎に対する寛解維持療法の確立に向けて、CD4+組織常在型メモリーT(Trm)細胞における皮膚での駐在メカニズムを解明することである。これまでに、CD4+卵白アルブミン特異的T細胞(OT-II T細胞)を移入した遅延型過敏症マウスモデルを用いて、CD4+Trm細胞は真皮樹状細胞のサブセットの1つであるconventional DC2(CD11c+CD301b+細胞)とともにクラスターを形成して皮膚に駐在することが示唆された。 そこで、ジフテリア毒素(DT)でcDC2を除去できる遺伝子改変マウス(CD301b-DTRマウス)を用いて、炎症収束後(Day35~45)の皮膚でcDC2を除去した際の、CD4+Trm細胞の数の変化を検討した。DT投与群では、PBS投与群に比較して、皮膚に留まるCD4+Trm細胞の数が減少することがフローサイトメトリーにより明らかになった。さらに、二光子励起顕微鏡を用いた解析から、DT投与群ではクラスター内のCD4+T細胞の数が減少し、クラスターの数および体積が減少することが明らかになった。以上より、cDC2はCD4+Trm細胞とクラスター形成し、CD4+Trm細胞の皮膚駐在に重要であることが明らかになった。一方、炎症急性期(Day7)にcDC2を除去してもTrm細胞の数に変化はなく、抗原再暴露直前にcDC2を除去した場合も再暴露に対する炎症の程度(耳介厚の腫脹)は変化がなかった。そのため、cDC2はTrm細胞への分化や、再暴露時のTrm細胞への活性化には関与していないことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
真皮樹状細胞のサブセットの一つであるconventional DC2(CD11c+CD301b+細胞)が、CD4+組織常在型メモリーT(Trm)細胞ともにクラスター内で共局在することを見出した。さらに、ジフテリア毒素(DT)でcDC2を除去できる遺伝子改変マウス(CD301b-DTRマウス)を用いて、炎症収束後の皮膚でcDC2を除去すると、クラスター内のCD4+T細胞の数が減少し、皮膚に留まるCD4+Trm細胞の数が減少することを証明した。
|
Strategy for Future Research Activity |
炎症収束後の皮膚におけるライブイメージングにより、樹状細胞は運動性が低くクラスター内に留まるのに対して、CD4+T細胞は運動性が高くクラスター内外を出入りしている。これまでの研究結果を加味すると、真皮樹状細胞サブセットの一つであるconventional DC2(cDC2)から何らかの細胞遊走因子(ケモカイン)が産生され、CD4+Trm細胞を誘引してクラスターを形成している可能性が高い。今後は、cDC2由来ケモカインに焦点を当てて、クラスター形成機構に重要な因子を同定する。
|
Causes of Carryover |
本年度は主に当研究室保有の試薬および遺伝子改変マウスを用いて解析を行なったため物品等の経費が抑えれたほか、新型コロナウイルス感染症のため国際学会が中止となり旅費の支出がなかった。次年度に、次世代シークエンスを行う予定であり、そこで次年度使用分の経費を用いる。
|