2020 Fiscal Year Research-status Report
褐毛和種牛の封入体病の病態解明とsod1変異に関する検討
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19K15994
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
渡邉 謙一 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (10761702)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 褐毛和種 / 神経変性疾患 / SOD1 / 封入体 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
検索の過程で臨床症状を呈さない褐毛和種牛の一部にも封入体形成がみられること、発症時期が概ね3歳前後と肉牛の週齢としては高齢であることから、潜在的な保因牛が存在する可能性が示唆された。そこで、2020年度は食肉衛生検査場の協力の下、同地域にて使用される健康な褐毛和種牛の脳208個体 (4歳以上のものが18例、2歳以下のものが190例) を解析したところ、全体の34%に相当する71個体に封入体の形成が認められた。サンプルの構成比に偏りが見られるのは多くの褐毛和種牛が2歳前後で食肉として出荷されるためであり、日本あか牛登録協会のデータベースを用いた簡易家系調査、および各農家における陽性率に目立った偏りはみられなかった。 現在までの解析では、これら潜在的な保因牛と発症牛との脳組織における封入体の分布や形態には明らかな違いは認められていない。また、IBD症例の脳では軸索腫大や封入体形成などはみられるものの、明らかな神経細胞死や脱髄などの変化はみられておらず、病態解明のためには異なる方面からのアプローチが必要と考えた。そこで、2歳以下の190個体を封入体形成の有無に基づき症例群と対象群に分け、脳組織から抽出したDNAのDIN値が高いものから順に32症例ずつを選別し、バルクDNAを調整した。これらバルクDNAに対し、NGSを用いて全ゲノムシーケンスを行い、ウシゲノムを鋳型としてマッピングを行った。2群間のゲノムを比較した結果、69500程度のSNPが検出された。次年度以降はこれら候補SNPのうち、2群間での差異が大きなものから絞り込みを行い、疾患関連遺伝子の同定を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は新規の発症牛のサンプルを入手することはできなかったが、潜在的な保因牛に着目することにより良質な脳サンプルを、十分量得ることができた。一方で、検体数の増加によりサンプル処理に時間を要したため、研究全体の進捗にはやや遅れが見られている。また、当該年度は老朽化した学内の動物用焼却炉の改修工事が行われたため、一次的に新規症例の受け入れを制限せざるを得ない期間が生じてしまったことも、進捗の遅れにやや影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
直近の課題は集団ゲノムの解析である。また、RNA-seqやqPCRの結果と合わせ、脳病変に対する理解を深める。さらには潜在的保因牛を検出可能な検査法の開発を行う。 新鮮凍結材料を入手できたことから、FFPE組織では困難であった生化学的解析なども実施できる見通しが立った。IBDの診断に最も重要である封入体の構成成分について解析を行うとともに、診断上有用な抗体の作成などを実施する予定である。
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Causes of Carryover |
解析の一部を生物資源ゲノム解析拠点の共同研究として実施できたことから、利用事業次世代シーケンスに要する費用の一部を抑えることができた。また、新型コロナウイルス感染症の流行により移動が制限されたため、旅費など一部の予算を繰り越した。
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