2021 Fiscal Year Annual Research Report
褐毛和種牛の封入体病の病態解明とsod1変異に関する検討
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19K15994
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
渡邉 謙一 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (10761702)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 褐毛和種牛 / SOD1 / 神経変性疾患 / 封入体 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度では、全ゲノム解析データの再解析およびRNA-seqによる発現解析を中心に実施した。封入体保有牛および対照群の2群間の延髄組織における発現遺伝子を比較したところ、76遺伝子の発現量に差異が認められた。これら76遺伝子についてGO解析を実施したところ、保有牛ではOXPHOSなどミトコンドリアにおける代謝関連遺伝子が過剰発現していることが明らかとなった。更に免疫染色により、封入体周囲にTomm20陽性顆粒やpan-NOS陽性顆粒を確認している。全ゲノム解析データからは、封入体構成蛋白であるSOD1, ミトコンドリアDNA、FUSやTDP-43などに2群間で大きな欠失、挿入などは認められず、いくつかのSNPが確認されたが、これらの殆どはイントロンに位置していた。核DNA中のミトコンドリア関連遺伝子については今後の検討課題である。 また、本症の封入体はウシSOD1のN末端側を認識する自作抗体に対し強陽性を示し、FFPE組織を用いた本症の診断に有用であることが明らかとなった。一方で、一部の症例はウシSOD1のC末端側を認識する抗体やヒトALS関連の変異SOD1に対するカクテル抗体にも弱陽性であり、ウシ野生型/変異型SOD1の全長が蓄積している可能性も否定できない。 これまでに得られた検討結果から、本症ではSOD1の異常蓄積を起点とし、酸化ストレスの上昇によるミトコンドリアの機能低下が生じていると考えられる。無症状の封入体保有牛では明らかな神経細胞の脱落などは認められていないものの、発症牛よりも多数の封入体が観察される傾向にあり、封入体形成は神経細胞死や発症に至る前段病変であると推察される。現段階では原因遺伝子の特定に至っていないが、ヒトのミトコンドリア病やALSなどの神経変性疾患に類似する疾患であることが再認識され、現在も同様の形質を有する牛群が存在していることが明らかとなった。
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