2022 Fiscal Year Research-status Report
Effects of vasopressors on cardiovascular function in dogs with mitral valve insufficiency.
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19K15997
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
合屋 征二郎 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (20836887)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 低血圧 / 犬 / 僧帽弁閉鎖不全症 / 昇圧薬 / 圧容量曲線解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度で当初予定していた実験を完遂した。麻酔下で低血圧状態にした健常犬と僧帽弁閉鎖不全症モデル犬にエフェドリン、フェニレフリン、ノルアドレナリンを投与した。その結果、エフェドリンは心筋の収縮性を上昇させることで血圧と1回拍出量を上昇させるが、フェニレフリンは心筋の収縮性は変えずに血管を収縮させるため血圧を上げるが1回拍出量は上昇させないことが明らかとなった。また、エフェドリンは迷走神経反射により心拍数を低下させる作用もあるがその効果はアトロピンで予防され、アトロピンを前投与した場合はエフェドリンの昇圧作用が増強することが明らかとなった。 このことは実際の臨床例でも確認され、心疾患のない低血圧の犬においてエフェドリンを使用する際はアトロピンを事前に投与しておくことが有効であることが明らかとなった。 僧帽弁閉鎖不全症モデル犬における各昇圧薬の昇圧メカニズムは健常犬と同様であったが、健常犬と比べて昇圧作用が減弱した。僧帽弁閉鎖不全症モデル犬におけるフェニレフリン投与は、昇圧作用が認められたものの逆流量の増加も認められ、左室の前負荷が上昇した。自然発生の僧帽弁閉鎖不全症の犬においても、フェニレフリンによる十分な昇圧作用を得るには健常犬と比較して多量の投与量が必要であった。研究責任者の実験結果はこの臨床結果を裏付けることになった。 一方、ノルアドレナリンにおいても十分な昇圧効果が得られたが左室前負荷の上昇はフェニレフリンほどではなかった。上記の結果より、低血圧を呈した僧帽弁閉鎖不全症の犬における昇圧薬はノルアドレナリンが妥当であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は東京農工大学特有の設備を用いて行う予定であったが、コロナ禍により東京農工大学所属者以外の当該施設への立ち入りが不可能になってしまった。研究責任者の日本大学への移動も相まって、研究の遂行が困難になるという問題が生じた。この問題を解決するため、研究責任者は東京農工大学所属の獣医師に技術教育を行い、代わりに実験を行ってもらった。実験中のトラブルシューティング解決のため、研究責任者はリモートで指導を行い、当初予定していた実験を全て完遂することができた。予定より2年遅れてしまったが、研究中止の危険性を乗り越えて有意義な実験結果を得ることができたことから、本研究課題の進捗状況は概ね順調であると判断した。本実験結果は令和5年度中に海外の獣医麻酔雑誌に投稿する予定である。また技術教育と並列して進めた臨床研究結果も同様に投稿予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究結果から僧帽弁閉鎖不全症の犬の昇圧薬としてノルアドレナリンが最も妥当であると考えられるが、自然発生の僧帽弁閉鎖不全症の犬におけるノルアドレナリンの効果はまだ検討できていない。今後は実際の僧帽弁閉鎖不全症の犬に対してノルアドレナリンを投与し、その昇圧作用や有害作用を検討する必要がある。それにより本研究課題は完全に目的を達成できる。 また、本研究結果はさらなる研究課題も提供した。たとえば昇圧薬を用いる理由の1つとして心臓以外の臓器への循環血液量の確保があるが、本研究課題ではそれら臓器への灌流量は明らかにできなかった。僧帽弁閉鎖不全症の犬におけるノルアドレナリン投与が臓器灌流量をどの程度確保できるかを明らかにする必要がある。 さらに、本研究結果から昇圧作用の効果判定には血管抵抗の正確な評価が必要であることが示唆されたが、獣医療において血管抵抗を求めるのは非常に煩雑である。血管抵抗を簡易的に示すことができる麻酔モニタリング指標の開発が求められる。 これらの新たな研究課題を解決することで本研究課題は発展・深化するものと考えられる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で研究施設に入ることができず、実験を実施することが困難であった。研究責任者に代わって当該研究施設に出入り可能な獣医師に実験を行ってもらうことで問題解決を行おうと考えたが、研究責任者の専門スキルを教育する必要があった。その結果、当初の予定より2年ほど進捗が遅れてしまったため、論文の英文校正や投稿費用をずらす必要があった。次年度は論文投稿費用として使用する予定である。
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