2021 Fiscal Year Annual Research Report
子宮内免疫反応制御による牛性選別精液人工授精方法の確立とその制御機構の解明
Project/Area Number |
19K16010
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Research Institution | Fukuoka Agricultural and Forestry Research Center |
Principal Investigator |
山口 昇一郎 福岡県農林業総合試験場, 畜産部, 研究員 (30502520)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 性選別精液 / レスベラトロール / カフェイン / 人工授精 / 乳牛 / ミトコンドリア / 子宮内遺伝子発現 / 精子活力 |
Outline of Annual Research Achievements |
牛性選別精液は、通常精液に比べて経産牛の受胎率が低いことが課題となっている。受胎率が低い理由として、封入精子数が少なく、選別による精子へのダメージによって精子運動性の低下等が指摘されている。そこで、深部注入器を用いた性選別精液の人工授精(AI)体系の中で、精子の運動性に関与するミトコンドリアへの保護効果が報告されているレスベラトロール(Res)を同時注入することで受胎率の向上効果等について検討し、さらにAIによる子宮内の免疫応答に関する遺伝子発現を明らかにする。 試験1では、Resによる精子運動性に及ぼす影響について検討した。凍結精液を融解後、20mMカフェイン添加モデナ液にResを0~300μM添加した希釈液で等倍に希釈した。対照区は、そのまま培養したものとした。検討の結果、融解後3時間目までは精子運動性に差は認められなかったが、融解6時間後には、対照区が300μM添加区に比べ有意に運動性が低下した。また、ミトコンドリア活性の指標となるATP含量は、有意に300μM添加区が多かった。試験2では、AI後の子宮内遺伝子発現への影響について検討した。AI方法は、300μM添加希釈液1mlを用いてYTガンで性選別精液のAIを実施した。試験の結果、IL-1βの遺伝子発現は、Res無添加の場合には、AI未実施に比べ有意に増加したが、Res添加によって有意な増加が認められなくなった。試験3では、受胎率に及ぼす影響について検討した。AI方法は、試験2と同様とし、対照区は空気による注入とした。検討の結果、受胎率には差は認められなかった。 以上の結果から、牛性選別精液AI時のRes注入により精子のミトコンドリアが保護され、精子運動性が長く維持されるとともに子宮内膜での炎症性サイトカイン(IL-1β)の遺伝子発現が抑制されることが明らかとなった。受胎率については、影響が認められなかった。
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