2019 Fiscal Year Research-status Report
滑膜細胞のエピゲノム調節による炎症性サイトカイン発現制御機構の解明
Project/Area Number |
19K16015
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
佐伯 法学 愛媛大学, 学術支援センター, 助教 (80791607)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 関節リウマチ / 滑膜線維芽細胞 / UHRF1 / DNAメチル化 / CCL20 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は関節炎モデルマウスを用いて、(1)DNAメチル化促進因子Uhrf1が関節炎組織で高発現すること、(2) 滑膜線維芽細胞 (SF)のUhrf1は病態のネガティブフィードバック機構に働くことを明らかにしてきた。本年度の研究では、主にマウス由来SFとヒト臨床サンプルを用いた以下の実験を遂行した。 Uhrf1によるDNAメチル化の標的遺伝子を探索するため、SF特異的Uhrf1欠損 (cKO) マウスおよび対照 (Ctrl) マウスから初代培養SFを採取し、その細胞から得られたmRNAとゲノムDNAを材料に、RNA-seqとMBD-seqを行い、トランスクリプトームとメチロームの統合解析を行った。その結果、Ctrl由来SFと比較してcKO由来SFで発現上昇していた171 遺伝子のうち、105 遺伝子はUhrf1によるDNAメチル化で発現制御されることが示唆された。また、105 遺伝子に関してパスウェイ解析を行うと、「Cytokine-cytokine receptor interaction」と「Rheumatoid arthritis」に関連する8遺伝子が有意に抽出された。 また、現在、変形性関節症(OA)と関節リウマチ(RA)の臨床滑膜サンプルを使用して実験を遂行している。OA滑膜と比較してRA滑膜ではUHRF1 mRNA発現が有意に高いことが判明した。また、UHRF1はRA滑膜のSFに発現することを免疫染色で明らかにした。さらに、RA滑膜由来SFを採取し、siRNAでUHRF1を遺伝子抑制すると、上述のパスウェイ解析で抽出された8遺伝子のうち、CCL20 mRNAが有意に発現上昇することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス由来滑膜線維芽細胞は収量が少ないため、当初、トランスクリプトームとメチロームの統合解析は難航することが予想されたが、比較的早い段階で結果を得ることができた。また、ヒトの臨床サンプルも予想を超えるペースで集まっており、解析結果に関しても関節炎モデルマウスで得られた結果の再現性が得られつつある。以上より、ここまでの研究は順調に達成されていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究結果から、滑膜線維芽細胞のUHRF1はCCL20の発現を制御して病態のネガティブフィードバックに寄与すると考えられる。CCL20は自己免疫疾患の増悪に寄与するTh17細胞をリクルートするケモカインとして知られているため、今後はUHRF1の発現とTh17細胞の関連を関節炎モデルマウスおよび臨床サンプルを用いて明らかにする。また、当初、将来的な臨床応用を考慮して、ウイルスベクターを用いてUhrf1を過剰発現した関節炎モデルの病態解析を計画していたが、近年報告された論文を参考に予定を変更し、プロテアソーム阻害する低分子化合物を用いたUhrf1の発現維持が関節炎病態を抑制するか否かをin vitroとin vivo解析する。
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Causes of Carryover |
研究成果が比較的順調に得られており当初予定していた使用金額よりも少なく済んだために次年度使用額が生じた。次年度に、多くの臨床サンプルを使用した研究を計画しているためその分に割り当てる。
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Research Products
(5 results)