2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K16022
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
平岡 毅大 北里大学, 医学部, 助教 (20836762)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 再生医療 / 着床障害 / STAT3 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、先天的・後天的要因による子宮の器質的欠損や、子宮内膜の菲薄化による着床障害等の子宮機能低下など、現在の医療では克服し難い難治性妊孕性障害に対する画期的治療法の提供を目的とし、再生医療の観点から課題克服に取り組むものである。申請者らは、マウス子宮の組織片に界面活性剤処理を施し、細胞成分を虚脱させ細胞外基質タンパク質のみで構成された脱細胞化子宮組織をレシピエントマウスの子宮内に移植し、機能的な子宮組織の部分的再生に成功した。また、この子宮再生に転写因子STAT3が関わっていることも明らかにした(Hiraoka T et al. JCI insight, 2016)。子宮特異的STAT3欠損マウスは着床障害による不妊を呈することが知られており、かつ子宮内膜は周期的に再生を繰り返す組織であることから、STAT3は子宮内膜の再生能と着床能を橋渡しする重要な分子である可能性が示唆された。そのため、着床におけるSTAT3の機能解析を進め、STAT3に関わる決定的な分子群を同定してゆけば、マウス脱細胞化組織移植モデルを用いてさらに詳細な子宮再生メカニズムが解明できると考えられた。申請者らの研究グループは子宮特異的低酸素誘導因子HIF2α欠損マウスを用いた着床研究(Matsumoto L et al. J Clin Invest, 2018)に代表されるようにマウスモデルを用いた着床研究のノウハウを有しているが、申請者が関わり、STAT3の上流因子である白血病阻止因子LIFが着床を制御する分子学的機序に関する研究は、英文学術誌に掲載された(Matsuo M et al. Endocrinol, 2019)。また、STAT3の機能を含む着床の分子生理学的機序に関する総説も本年度に英文学術誌に掲載された(Fukui Y et al. Reprod Med Biol, 2019)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、in vivoの実験系で申請者らが確立したマウス脱細胞化組織移植モデルを出発点とし、大きな柱として①既に子宮再生障害の表現型が明らかになっている子宮特異的STAT3欠損マウスのさらなる解析、②STAT3に代表されるような子宮再生障害と着床障害の橋渡しをする分子群を同定する、③将来的にin vitroでの子宮再生培養系を確立する必要性から、オルガノイド培養や、脱細胞化子宮組織と加圧式循環培養装置を組み合わせた立体的な子宮培養系を確立する、ことなどが挙げられる。①に関しては、子宮特異的STAT3欠損マウスの再生過程における上皮・間質の部位特異的遺伝子発現をレーザーマイクロダイセクションや次世代シーケンサーを用いて解析中である。同時に、申請者らが今回独自に作製した子宮上皮特異的STAT3欠損マウスや子宮間質特異的STAT3欠損マウスに脱細胞化組織移植モデルを用い、再生過程の表現型に関する結果を得てきている。②に関しては、胚の子宮内膜への接着反応の直後の障害により不妊をきたす子宮特異的HIF2α欠損マウスに対して脱細胞化組織移植を行い、子宮再生の表現型を解析している途上である。③に関しては、組織構造を部分的に再現し腸での研究が盛んであるオルガノイド培養を、子宮内膜の初代培養細胞を用いて研究を進めている。現在、市販の細胞外基質製剤や種々の成長因子を組み合わせることで、通常の培養皿上での二次元培養と比較して長期的に継代が可能な実験系が確立されつつある。加圧式循環培養装置を用いて脱細胞化組織内に播種した細胞を長期培養する実験系については、器械的な条件検討も含めて実験を進行中である。以上のことから、いずれの実験項目に関しても、概ね順調に研究を遂行できているものと判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究を構成する柱である以下の三項目①子宮特異的STAT3欠損マウスの再生過程の解析、②着床障害に関わる分子の子宮再生に関する機能解析、③in vitroでの子宮再生培養系を確立、の方針に則って研究を推進してゆく。具体的には、①に関しては現在得られてきている子宮特異的STAT3欠損マウスの再生過程における遺伝子発現解析を進めつつ、子宮上皮・間質特異的STAT3欠損マウスの解析も行うことで、STAT3が子宮再生を制御する機序の詳細を明らかにしてゆく。②に関しては、不妊に関わる分子HIF2αが子宮再生に寄与する点に関して脱細胞化組織移植モデルを用いて明らかにする。また、申請者が本研究の一環で第一著者として進め、子宮のSTAT3が着床を制御する分子機序を解明する研究は、現在英文科学誌に論文投稿中である。さらに、申請者らはSTAT3の上流因子であるLIFに関する遺伝子改変マウスを新規に作成し、着床に関する興味深い結果が得られたため現在論文投稿準備中である。このように、STAT3に関連し着床を制御する分子群の同定を進めることで、子宮内膜再生の分子基盤メカニズムに関する理解が加速すると考えられる。そのため、申請者らが有する着床研究のノウハウを最大限活用し、着床障害の研究も並行して推進する予定である。③に関しては、現在確立されつつある子宮内膜細胞オルガノイドの機能的評価が必須であり、卵巣ホルモン受容体の発現や、卵巣ホルモンへの感受性などの機能的試験を行う予定である。また、さらに大きな子宮組織の試験管内培養を可能とする加圧式循環培養装置を用いた還流培養系については、脱細胞化組織の中心部まで均一に還流液を培養するための器械的条件検討も含めて、さらに研究を推進してゆく。
|
Causes of Carryover |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行していたが、マウスや薬剤の購入費用が当初予定していたよりも少なく済んだため実際の執行額とは異なる結果となった。しかし、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初より予定していた通りの計画を進めていく。
|
-
[Journal Article] IL-33 Exacerbates Endometriotic Lesions via Polarizing Peritoneal Macrophages to M2 Subtype.2020
Author(s)
Ono Yosuke, Yoshino Osamu, Takehiro Hiraoka, Akiyama Ikumi, Sato Erina, Ito Masami, Kobayashi Matsumi, Nakashima Akitoshi, Wada Shinichiro, Onda Takashi, Unno Nobuya, Osuga Yutaka
-
Journal Title
Endocrinology
Volume: 27
Pages: 869~876
DOI
-
-
-
-
-