2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K16030
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
塚本 篤士 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (00647175)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 麻酔 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの研究により、生育環境が麻酔感受性に対して影響を及ぼすことを明らかにした。本年度は麻酔感受性差の発現要因について、遺伝子発現とDNAメチル化に着目して解析を実施した。2つの異なる条件下で飼育後、麻酔感受性に差異を認めたマウスにおいて脊髄ならびに海馬を採材した。各サンプルを用いてRNA-seqならびにReduced Representation Bisulfite Sequencing(RRBS)を実施し、遺伝子発現ならびにDNAメチル化の変化を比較した。RNA-seqの結果より、GABA受容体やTRPV1、ウロコルチンなど、麻酔感受性に関連する遺伝子の発現に変化が認められた。Gene Ontology解析ではエピジェネティクスに関連するタームが得られ、ヒストン脱アセチル化酵素であるHDAC7の遺伝子発現が変動していた。次にRRBSを実施し、RNA-seqのデータとの統合解析を行ったところ、発現が変化した遺伝子の内、DNAメチル化に変化が認められた割合は1%程度であった。また、麻酔感受性に関連する遺伝子の近傍領域におけるDNAメチル化には変化を認めなかった。 本申請課題の一連の研究結果より、飼育環境の差異に伴う遺伝子発現の変化が、麻酔感受性差の発現要因になりうることが示唆された。しかしながら、この遺伝子発現の変化とDNAメチル化の関連性については見い出すことができなかった。本研究では麻酔感受性の異なる個体間においてヒストン蛋白やHDACの遺伝子発現に差異が認められていることから、今後はヒストンのアセチル化を含めたエピジェネティクス制御の関連性を検証することが望まれる。本研究で得られた知見は、医療分野ならびに実験動物医学分野における麻酔管理の進展に寄与するものと考えられる。
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