2021 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトiPS細胞由来の成熟化心室筋・心房筋細胞の作製とそのメカニズム解析
Project/Area Number |
19K16041
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小圷 美聡 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (90565813)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ヒトiPS細胞由来心筋細胞 / 成熟化 / 心室筋細胞 / 心房筋細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はヒトiPS細胞由来心筋細胞の成熟化を促進する化合物を同定するため、生後の心臓組織に発現し、心筋細胞の生理機能に重要なカルシウムイオンの細胞内濃度調整に関わるタンパクの発現レベルを指標としたスクリーニングによって化合物Xを同定した。iPS細胞から分化する過程で化合物Xを添加して作製した心室筋細胞、心房筋細胞では、どちらの細胞においても成熟化遺伝子の発現が上昇していた。 最終年度では、化合物Xによる成熟化の表現型のひとつとして心筋細胞内の筋小胞体におけるカルシウム貯蔵能が向上する事を明らかにした。このことはカルシウムポンプを有する筋小胞体の成熟化を示唆するものである。現在、生体の組織に近い心筋細胞の組織モデル作製において、生体内のものと比べて収縮力が低い事が一つの課題であることから、心筋細胞の収縮弛緩メカニズムに直結した成熟化化合物を見出せた意義は大きい。 更に、化合物Xによる成熟化メカニズム解明のためRNA sequence解析を実施し、化合物Xによって神経伝達物質受容体遺伝子群の発現が有意に変動していることを明らかにした。化合物Xはある神経伝達物質受容体Bの阻害剤として働くこと、また化合物Xのみならず、その受容体Bを阻害する別の化合物でも同様の成熟化促進作用が確認されたことから、受容体Bの阻害が心筋成熟化を促進するという新規メカニズムを同定した。また、その受容体Bからのシグナルとクロストークする他受容体の活性化化合物を併せることで、更なる成熟化が誘導された。これら受容体の活性は生体内において発生段階に伴い制御されていることから、実際の発生過程における心筋細胞の成熟にも本研究で明らかにした新規メカニズムが関与する事を示唆するものであり、今後も詳細解明に向けて研究を進めていく。
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