2019 Fiscal Year Research-status Report
Thermo-sensing Mechanism of Heat Shock Factor 1 through Comparative Biology
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19K16046
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
坂本 丞 基礎生物学研究所, 生物機能解析センター, NIBBリサーチフェロー (80804145)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 熱ショック応答 / 熱ショック転写因子 / メダカ / 比較生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究の目的は熱ショック応答の制御因子の一つとして知られる熱ショック転写因子1(HSF1)の温度依存的な活性化機構を明らかにすることにある。令和1年度はHSF1のバイオインフォマティックな解析を行うための基盤構築を始動した。これまでに分子系統学的な解析を行うためのソフトウェアなどを導入し、種々の生物のHSF1のアミノ酸配列を取得した。これらを用いて、分子系統学的な解析を開始している。しかしながら、既存のアミノ酸一次配列を解析するためのモデルを使用した分子系統解析では、想定通り温度差を反映した結果はこれまでのところ得られておらず、さらなるモデルの検討が必要と思われる。 他方で、in vitroでHSF1の活性化温度を解析するために組み換えタンパク質発現系の構築に着手した。NBRP Medakaが提供する完全長cDNAクローンライブラリーから、メダカHSF1の完全長cDNAもを入手した。また、ヒラメHSF1のクローニングもこれまでに終了しており、これらを用いてメダカおよびヒラメHSF1の組み換えタンパク質の発現に必要なコンストラクトを作製した。現在はこれらのコンストラクトを用いて、現在はメダカおよびヒラメHSF1の発現に最適な条件を決めるための実験を進めているところである。 更には、in vivoでメダカとヒラメのHSF1の機能を解析するプラットフォーム。本解析にはトランスジェニックメダカの作出が必須であるが、この際にメダカ内在性HSF1の発現が模倣できるようなトランスジェニックメダカを作出するのが理想的である。そこで、CRISPR/Cas9法を用いたノックイン法の検討を開始した。これまでに、gRNAの設計や遺伝子導入用のコンストラクトの構築は終了している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度行う予定だった、アミノ酸配列の情報をもとにしたHSF1の温度活性化機構の解析に必要な基盤の構築は概ね完了した。しかしながら、バイオインフォマティックな解析はこれまでのところ良好な結果が得られておらず、温度活性化機構に関わるようなタンパク質分子のドメインは特定できていない。その一方で、来年度までに実施予定の組み換えタンパク質を用いたin vitroの温度応答性の解析基盤の構築に着手しており、現在タンパク質誘導の最適条件を検討中である。加えて、in vitroの結果を生体内で検証するための基盤構築にも着手し始めた。以上の状況を加味して、現在までの進捗状況は「概ね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では【A】バイオインフォマティクスにようHSF1の温度依存的活性化機構に寄与する領域の解析; 【B】組み換えタンパク質を用いたHSF1温度応答性の解析; 【C】AおよびBの解析結果の生体内での検証、の3つの大きな柱を中心に解析を進めている。 【A】では、これまでに伝統的に分子系統解析に使用されているようなモデルを使用した解析を行った。しかしながら、現在温度に関連するような解析結果は得られていない。そこで今後は近年報告され始めたタンパク質構造をもとにしたモデルを利用することで、HSF1の活性化と温度の関連をin silicoで解析する。さらには、PROVEANを用いて、タンパク質機能に影響を与えうるアミノ酸残基を解析する。 【B】では、組み換えタンパク質を用いた温度応答性の解析を行う。この基盤構築にはすでに着手しており、基礎的なタンパク質発現系の準備は進んでいる。現在は最適な組み換えタンパク質の誘導条件の検討中である。誘導条件が確定し次第、当初の予定通りNATIVE-PAGEやゲルシフトアッセイによるHSF1の温度応答性の解析を行う。 【C】ではAおよびBの実験結果を生体内で検証する。このためにCRISPR/Cas9法によるノックイン手法の立ち上げを開始した。ノックインにより導入するHSF1の発現コンストラクトの作製はこれまでに終了しているため、今後はこのコンストラクトをマイクロインジェクションによりメダカ卵に導入する。作出されたトランスジェニックメダカを用いて、全身温浴等により生体内でのヒラメHSF1の温度応答性を解析する。
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Causes of Carryover |
旅費およびその他の経費は想定よりも高くなったが、購入物品が想定よりも安く購入できたため、次年度に使用する。
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