2021 Fiscal Year Annual Research Report
H3K9me2ドメインの形成基盤と高次クロマチン構造形成における役割の解明
Project/Area Number |
19K16049
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
福田 渓 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (00756786)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 高次クロマチン構造 / ヘテロクロマチン / H3K9メチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
転写抑制性クロマチン修飾のヒストンH3リジン9番目のメチル化(H3K9メチル化)はヘテロクロマチンの形成に重要であり、H3K9メチル化異常はがん、精神疾患、不妊など様々な病気と関連することから、H3K9メチル化の制御機構の理解は重要である。哺乳類においてH3K9メチル化はSETDB1, SUV39H1, SUV39H2, EHMT1, EHMT2の少なくとも5つのヒストンリジンメチル化酵素により媒介されるが、それぞれの酵素が標的とするゲノム領域の詳細は明らかではなかった。本研究ではそれぞれの酵素を欠損したマウス胚性幹細胞 (mESCs)におけるH3K9メチル化状態をChIP-seqにより解析した。その結果、核内の転写活性性の区画 (A compartment)はSETDB1が主要な働きをするのに対し、転写抑制性の区画 (B compartment)は5つの酵素が冗長的に働きメチル化を媒介し、核内の区画により機能するメチル化酵素が変わることが明らかとなった。さらに、ヘテロクロマチンの空間配置が各H3K9メチル化酵素各酵素の欠損細胞で異常を示すか調べるため、Hi-C解析を行った。その結果、各酵素の欠損細胞ではB compartmentの状態はほとんど変わらないことが明らかとなった。以上の結果をCommunications Biology誌に報告した。本研究をさらに進展させるため、5つのH3K9メチル化酵素の全てを欠損した細胞の表現型を調べたところ、H3K9メチル化完全欠損細胞ではH3K27me3がB compartmentに蓄積し、H3K9メチル化によるヘテロクロマチン空間配置制御の機能を代替することが明らかとなった。以上の結果を現在論文にまとめているところで、当初の研究目的を達成しただけでなく、さらに発展させることができた。
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