2019 Fiscal Year Research-status Report
麻疹ウイルス膜融合開始複合体の構造解析による宿主細胞感染機構の解明
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19K16057
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鈴木 干城 九州大学, 医学研究院, 助教 (80833334)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 麻疹ウイルス / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
麻疹(はしか)を起こす麻疹ウイルスは、インフルエンザウイルスの10倍以上の高い感染力を示し、一過性の免疫抑制を起こすため、高い病原性を示す。その医学的重要性にもかかわらず、未だ感染メカニズムは十分理解されていない。申請者のグループは、細胞への感染に必須となる2つの麻疹ウイルスタンパク質(HとF)の結晶構造解析により、細胞感染メカニズムの一端を明らかにした。さらに、HとFの構造と機能解析に基づき、4量体構造を取るHが会合状態を変化させることで、Fによる細胞感染の開始(膜融合)を制御するという仮説を立てた。本研究では、H-F複合体の結晶構造解析によりこの仮説を検証し、麻疹ウイルスの細胞感染メカニズムを明らかにする。麻疹には有効な治療法がないため、研究成果は、HとFの相互作用領域を標的とした抗ウイルス薬開発に必要な構造基盤として活用できる。 H-F複合体を調製するため、ヒト由来HEK293GnT1(-)細胞を用いて、Fとの相互作用領域を含むHタンパク質コンストラクトの検討を行い、安定性の高いコンストラクトについては精製を行った。Fタンパク質については、ショウジョウバエ由来S2細胞を用いて発現、精製を行った。Fタンパク質は宿主プロテアーゼによるプロセシングを受けて成熟するが、プロセシングを受ける前の前駆体Fタンパク質(F0)はHタンパク質との親和性が高いことが報告されていることから、F0についても発現、精製を行い、解析に十分な量のタンパク質を得ることができた。精製したHとFタンパク質を用いて、Biacoreによる相互作用解析を行った。しかしながら、相互作用シグナルを得ることはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Fタンパク質との相互作用に必要な領域を含むHタンパク質コンストラクトを決定することができた。Hタンパク質とFタンパク質の相互作用解析を行ったものの、相互作用は確認できなかったことから、タンパク質コンストラクトのさらなる最適化が必要であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
HとFタンパク質の相互作用が確認できなかったことから、親和性を高めるような変異導入を行い、精製タンパク質を用いて再度相互作用の解析を行う。相互作用が確認された場合、HーF複合体の結晶化条件の探索を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は安定なH-F複合体を調製するためのタンパク質コンストラクト形成に注力した。生じた差額は、次年度以降、構造解析用Linux PCの購入に充当する。
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