2022 Fiscal Year Annual Research Report
酵母のストレス応答における新規な細胞間情報伝達物質の特定とその増殖への影響の検討
Project/Area Number |
19K16070
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小田 有沙 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (00760084)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主たる研究成果は、"Autotoxin-mediated latecomer killing in yeast communities" Arisa H. Oda, Miki Tamura, Kunihiko Kaneko, Kunihiro Ohta, Tetsuhiro S. Hatakeyama. PLOS Biology (2022) https://doi.org/10.1371/journal.pbio.3001844 として学術論文に発表した。 本研究では、酵母の集団レベルでの適応を観察することで、細胞間相互作用を介した生存戦略を理解することを目指した。そこで、酵母の様々なストレス応答を調べていたところ、驚くべきことに、酵母がグルコース飢餓環境に適応する際、自身の増殖をも阻害する作用を持つ複数のストレス物質を環境中に分泌することが見出された。つまり、酵母は飢餓ストレスに適応するだけでなく、さらに別の複数の物質を分泌することで、より複合的な「飢餓+毒」というストレス環境を作り出していたのである。自らの増殖を抑制する物質の分泌は、生存には一見不利に思われる。だが、実際には、飢餓環境へ適応した酵母は、増殖阻害物質群への耐性も示した。これらの結果から、酵母の分泌する阻害物質は成長の阻害と同時に、 飢餓への適応を促進することで、自らのリネージに有利な環境を作り出している可能性が示唆された。この研究によって、酵母の環境適応を論じる上で、従来報告されてきた細胞内の応答と同時に、酵母自身による環境変化も取り扱うことで、より高次な適応現象の理解へとつながった。
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Research Products
(2 results)