2019 Fiscal Year Research-status Report
オートファゴソーム形成おける膜伸張メカニズムの解明
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19K16071
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小谷 哲也 東京工業大学, 生命理工学院, 特任助教 (10724643)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | オートファジー / リン酸化 / 出芽酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジーはオートファゴソームと呼ばれる脂質膜で細胞内物質を包み込み、液胞へと運び、分解する機構である。我々はこれまでにオートファゴソーム形成に必須のAtg2-Atg18タンパク質複合体がオートファゴソーム前駆体をオートファゴソームの膜の供給源と考えられている小胞体に繋ぎとめることを明らかにした。また小胞体の結合にはAtg2のN末端領域が関与することを示した。Atg2-Atg18複合体はオートファジーが誘導されていない時には細胞質に局在していることから、オートファジーが誘導されるとAtg2-Atg18複合体がオートファゴソーム形成の場に局在化し、さらに何らかの作用を受けて初めてAtg2が小胞体と結合できるようになると考えられるが、その制御機構はよくわかっていなかった。本研究ではこの制御機構を明らかにするためにAtg2のリン酸化に注目して解析を行った。 これまでにAtg2のリン酸化部位がいくつか報告されている。これらの部位をアラニンに置換した変異体を作製し、オートファジーに欠損を生じるか解析した。しかしどの変異体もオートファジーに欠損を示さなかった。次に近縁種間で保存性の高いセリン残基に注目し、アラニン置換変異体を作製して、オートファジーに重要なセリン残基を探索した。その結果、N末端領域内にそのようなセリン残基を二つ見出した。これら残基のアラニン置換変異体はオートファゴソーム形成の場への局在化には影響がないことも明らかにした。さらにこれら残基をアスパラギン酸やグルタミン酸に置換した変異体(疑似リン酸化変異体)ではオートファジーの欠損は示さなかった。しかし、この残基が実際にリン酸化されるかは不明であり、また、疑似リン酸化変異体ではオートファジー非誘導条件下での小胞体への局在化は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
APEX法を用いてAtg2が結合する小胞体のタンパク質の同定を試みたが、ビオチン化の効率の悪さや非特異的なビオチン化反応の影響が大きく、同定できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
Atg2のN末端領域にあるオートファジーに重要なセリン残基が実際にリン酸化されるかを質量分析で解析する。リン酸化が確認できれば、このリン酸化がオートファゴソーム形成のどのステップに重要かを解析する。さらにこのリン酸化に関与するキナーゼの同定を試みる。また引き続きAtg2が結合する小胞体のタンパク質の同定を試みる。APEX法や共免疫沈降法の条件を検討する。
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Causes of Carryover |
今年度はAtg2が結合する小胞体タンパク質を同定するための条件検討に時間を費やしたため、当初の予定よりも研究が遅れ、消耗品の使用量が少なかった。 次年度では様々な条件での質量分析を積極的に行う予定であり、消耗品費や質量分析機の使用料が増える予定である。
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