2019 Fiscal Year Research-status Report
CRISPRスクリーニングによる細胞膜脂質とイオンチャネルの機能連関の解明
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19K16075
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土谷 正樹 京都大学, 工学研究科, 助教 (00837338)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脂質代謝動態 / 脂質ラベル化 / CRISPRスクリーニング / オルガネラ膜 / 細胞膜 / クリック反応 / 細胞内有機化学 / ホスファチジルコリン |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜およびオルガネラ膜において、脂質の種類や量および局在は膜ごとに異なっている。膜脂質環境はタンパク質の機能調節を通じて細胞活動を支える重要な役割を担うと考えられている。しかし、膜脂質環境を決定する分子機構および膜脂質のタンパク質への作用機序について多くの疑問が残されている。 そこで本研究ではまず、膜脂質の代謝・動態を制御する因子群を網羅的に同定する方法の開発を目指した。本年度では、研究代表者が所属する研究室で独自に開発されたオルガネラ選択的な膜脂質の蛍光ラベル化法(第13回バイオ関連化学シンポジウムにて口頭発表)を基礎とし、ゲノムワイドな遺伝子探索が可能なCRISPRスクリーニングへ展開した。具体的戦略として、アジド基を細胞内の代謝経路を介し脂質へと導入した後、歪みアルキンを持つオルガネラ局在性色素と反応させ、特定オルガネラ膜で脂質を選択的に蛍光ラベルする手法を利用した。そして、個別のオルガネラレベルでの蛍光ラベル化脂質の量が変化した表現型異常を示す遺伝子変異細胞について、フローサイトメトリー(FCM)によって、2万種類にもおよぶ遺伝子欠損細胞ライブラリーからの選別を試みた。 現在までに、アジド基を導入したコリンから生合成されるアジド含有ホスファチジルコリン(PC)の代謝動態をモデルとし、各種オルガネラ局在性ラベル化剤の検討およびFCM解析系の構築を進めた。PC合成に必要な遺伝子PCYT1Aに対しCRISPRにより変異細胞を作製・解析したところ、野生型細胞に対し著しい蛍光ラベル化PCの減少および細胞増殖の遅延を認めた。このPCYT1A変異細胞を活用することで、蛍光ラベル化PCが減少した遺伝子欠損細胞集団を効率的にスクリーニングできる条件を得た。今後の予定として、濃縮した細胞集団に組み込まれた遺伝子変異を解析することで、PC代謝動態に関わる遺伝子群のバリデーションを進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、アジド基を導入したコリンを出発物質として生合成されるアジド含有PCの代謝・動態をモデルとして、各種オルガネラ局在性ラベル化剤(小胞体/ゴルジ体・ミトコンドリア・リソソーム・細胞膜)の反応性・除去特性の検討およびFCM解析系の構築を進めた。オルガネラごとのアジドPCに依存して細胞分離を実行できる手法を確立した。次に、PC生合成に必要な遺伝子PCYT1Aに対してCRISPR-Cas9法により遺伝子変異を施したK562細胞を作製・解析したところ、野生型細胞に対して著しい蛍光ラベル化PCの減少および細胞増殖の遅延を認めた。このPCYT1A変異細胞を活用して、CRISPR-Cas9 knockoutスクリーニングにおけるプロトコールの最適化を検討した。最終的に、蛍光ラベル化PCが減少した遺伝子欠損細胞集団を効率的にスクリーニングできる選抜条件を得るに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定として、スクリーニングによって濃縮された細胞集団に組み込まれた遺伝子変異(sgRNA配列)を次世代シーケンスにより解析することで、PC代謝動態に関わる既知・新規の遺伝子群についてバリデーションを進める。とくに、オルガネラレベルで異なる遺伝子変異に関する解析を検討することで、オルガネラ間のPCの分布比率を調節しうる因子の絞り込みを狙いたい。さらに、アジドコリンの他に、スフィンゴ脂質・グリセロ脂質のアジド基導入についても検討を考慮し、スクリーニングの拡張性についても吟味したい。本研究で解析対象とする脂質関連遺伝子の変異細胞について、特定のイオンチャネルの機能解析も進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初、CRISPRスクリーニング系の構築が難航すると思われたため、試薬類の購入に多額の予算を計上した。しかし、細胞種や操作条件の検討によって想定よりもスムーズにフローサイトメトリー解析系の確立に成功したため、試薬類にかかる使用額が減少し、次年度使用額が生じた。この繰り越し予算は次年度において次世代シーケンスの解析に充てる予定である。
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