2019 Fiscal Year Research-status Report
上皮細胞の個性決定における細胞膜リン脂質の役割解析
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19K16080
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
金丸 佳織 東京理科大学, 理工学部応用生物科学科, 研究員 (40838637)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞膜リン脂質 / 上皮細胞 / 細胞性質 |
Outline of Annual Research Achievements |
多細胞生物を構成する多様な細胞は各々に特有の性質を持っており、その特性を理解することは組織の恒常性維持を理解することと一致し、様々な疾患に対する理解、治療戦略の開発へとつながることも期待される。申請者は、上皮細胞が上皮細胞特有の性質(上皮性)として、ある細胞膜リン脂質を多く持つことを見出した。そこで、細胞膜リン脂質が細胞の上皮性決定に関与するという可能性を考え、細胞膜を構成するリン脂質の変化が細胞の上皮性に与える影響とそのメカニズムを明らかにすることを目的とした。当該年度の計画として、まず、細胞膜リン脂質の近傍で協働するタンパク質を探索することで、細胞膜リン脂質がどのように上皮性の維持に関与しているのかを検証した。その結果、複数の候補タンパク質を得られた。遺伝子オントロジーエンリッチメント解析により、細胞間接着に関連したものが多いことが明らかとなった。また、上皮性喪失時に発現変動するリン脂質代謝酵素の探索により得られた代謝酵素の発現操作により、細胞形態や、遺伝子発現の面において上皮性喪失を誘導することができることが明らかになった。さらに、非上皮細胞である骨肉腫細胞に、リン脂質合成酵素を発現させることで細胞膜リン脂質を増加させた際に、細胞形態が上皮様に変化し、上皮性が付与されることも見い出した。骨肉腫細胞では、上皮性を付与することにより、がんの悪性度が低下することが確認でき、細胞膜リン脂質を操作することで、細胞性質を変化させることが出来る可能性が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究では、細胞膜リン脂質との協働タンパク質の探索を終了し、複数の候補タンパク質を得られており、それらの詳細な解析へと研究を進めることができている。また、上皮性喪失時の細胞膜リン脂質減少機構の解明として、細胞膜リン脂質を増減させる代謝酵素を見いだしており、その代謝酵素の発現変動に伴う細胞の性質変化についての解析へと進むことができている。さらに、非上皮細胞において細胞膜リン脂質の発現増加に伴って、上皮性を付与することも確認できている。まだ、一つの細胞株についてのみという問題点はあるものの、論文にまとめるための道筋が大枠としてできていることを考えても、総合的に、研究はおおむね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞膜リン脂質の協働タンパク質として得られたタンパク質について、リン脂質の発現変動に伴った候補タンパク質の局在変化についてさらに詳細な解析を行う。また、非上皮細胞である骨肉腫細胞株について、複数の細胞株で細胞膜リン脂質の発現増加により上皮性の付与が可能なのか、検討する。
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Causes of Carryover |
所属機関が変わったことや、新型コロナウイルス感染症の影響により、複数の非上皮細胞株を用いて行う上皮性付与実験の一部を次年度に行うことにしたため。
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