2019 Fiscal Year Research-status Report
ユビキチン結合型カルパインによる細胞接着制御メカニズムの解明
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19K16081
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
野口 あや 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 研究員 (10836688)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カルパイン / ユビキチン / 細胞接着 / E-カドヘリン |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、カドヘリン-カテニン複合体構成因子について、野生型HCT116細胞とCAPN15ノックアウト(KO)細胞における切断断片の出現パターンを比較し、CAPN15の基質同定を試みた。その結果、E-カドヘリンが細胞膜貫通領域近傍でCAPN15に切断されることが明らかになった。E-カドヘリンと同じクラシックカドヘリンであるP-カドヘリンと、β-カテニン、αE-カテニンおよびp120はCAPN15によって切断されなかった。E-カドヘリンの断片が、ビオチン標識により単離した細胞表面タンパク質群に含まれていたことから、E-カドヘリンは細胞表面膜上でCAPN15に切断されると考えられる。また、リソソーム分解を阻害すると断片が蓄積したことから、CAPN15によって切断されて生じたE-カドヘリン断片がリソソームで分解されることが明らかになった。さらに、CAPN15によるE-カドヘリンの切断が、細胞膜外のE-カドヘリン同士の結合をキャンセルすることで誘導できることを見出した。このことから、CAPN15は細胞膜上の不安定なEカドヘリンを標的にしていると考えられた。 続いて、CAPN15活性におけるユビキチン(Ub)結合能の重要性を明らかにするため、薬剤処理によって細胞全体のUb修飾を阻害した。これにより、CAPN15によるE-カドヘリンの切断は完全に抑制された。また、Ub結合能のないCAPN15 (NE変異体) は、Eカドヘリンを切断しなかった。したがって、CAPN15はUb結合依存的にE-カドヘリンを切断することが明らかになった。以上の結果から、CAPN15がUb化修飾されたE-カドヘリンを基質認識して切断するのではないかと考えられた。そこで、EカドヘリンのユビキチンE3リガーゼをノックダウンし、断片化への影響を検証したが、E3ノックダウンはE-カドヘリンの切断に影響しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、次の3点を明らかにすることを目指している。1)Ub化修飾依存的にCAPN15に認識・切断される基質は何か、2)CAPN15不全が細胞接着制御を破綻させるのはなぜか、3)生体におけるCAPN15の生理機能は何か。1)については、基質認識メカニズムは不明であるものの、E-カドヘリンを基質として同定した。2)については、CAPN15が細胞表面のE-カドヘリンのリサイクルと分解のバランスを調節することを明らかにした。これらの成果の一部は、国際学会でポスター発表した。3)については来年度の課題とする。以上の状況から、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を論文にまとめて発表する。 CAPN15基質認識を仲介するUb化タンパク質とそのE3、およびCAPN15の細胞内局在を明らかにし、CAPN15が細胞接着を制御する一連のメカニズムを示す。続いて、生体における生理機能の解明を目指す。CAPN15は初期発生において機能することが示唆されるため、マウス胎児におけるCAPN15とE-カドヘリンの発現分布をプロファイリングする。また、新規基質の同定に着手し、今後の展開につなげる。
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Causes of Carryover |
当初計画していたよりも簡便な方法で基質同定に至ったため、試薬・実験器具代が大幅に節約できた。学会参加費と旅費も不要だった。
新規基質を同定するために、質量分析および免疫沈降、ウエスタンブロット解析、カルパインアッセイ等の実験を予定している。この際に使用する細胞や抗体、その他試薬の購入費に充てる。
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