2019 Fiscal Year Research-status Report
Activation mechanism of photoreceptor protein OPN4 and its physiological meaning
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19K16085
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木股 直規 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (40822929)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非視覚光受容 / メラノプシン / GPCR |
Outline of Annual Research Achievements |
マウスOPN4の分子機能に重要なアミノ酸残基を特定するため、脊椎動物型ロドプシンの知見を参考に変異体解析を行った。本年度は、ロドプシンの活性化に重要な2つのチロシン残基(Tyr191およびTyr268)に着目した。これらのチロシン残基は、ロドプシンの活性化効率を協働的に制御することが知られており、かつロドプシンファミリーに属するタンパク質の間で非常によく保存されている。そこで、マウスOPN4におけるこれらのアミノ酸残基(Tyr224およびTyr309)の変異体(Y224FおよびY309F)を作製した。これらの変異体を培養細胞に発現し、OPN4の光活性化によって駆動することが知られている、細胞内カルシウム濃度の上昇を測定した。その結果、野生型OPN4またはY309Fを発現した細胞では光依存的なカルシウム濃度上昇が見られたのに対し、Y224Fを発現した細胞では光依存的なカルシウム濃度上昇が見られなかった。この結果から、マウスOPN4においてはTyr224とTyr309がそれぞれ異なる機能を持つことが示唆された。 また、最近の報告により、OPN4が発現する網膜細胞である光感受性網膜神経節細胞において、cAMPが関わるシグナル伝達系も存在する可能性が示唆されている。そこで、野生型OPN4またはY224Fを発現した培養細胞について、光依存的な細胞内cAMP濃度変化を測定した結果、どちらもcAMP濃度の上昇を示した。この結果から、Tyr224はマウスOPN4では駆動するシグナル伝達系の選択性という、脊椎動物型ロドプシンとは異なる役割を持つと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べた通り、マウスOPN4のTyr224が分子機能に重要な役割を果たしていることを明らかにした。さらに、このアミノ酸残基は脊椎動物型ロドプシンにおける相同な残基とは異なる機能を持つ可能性を示唆した。現在は、このアミノ酸残基の機能についてさらなる解析を進めるとともに、他のアミノ酸残基についても着目し、変異体解析を進めている。以上の点から、培養細胞を用いた変異体解析は順調に進んでいると考えられる。 一方で、変異型マウスOPN4を発現したマウスの光生理実験については、当初の想定ほど進捗していない。その理由として、マウス網膜に変異体OPN4を発現させるために必要なアデノ随伴ウイルス(AAV)を作製する手法の確立に、想定以上の時間を要したことが挙げられる。しかし現在では、AAVの作製方法の改良により、十分な力価を持つAAVを得られている。また、マウスの光生理反応(体内時計の光位相シフトおよび瞳孔収縮)の測定系の確立は順調に進んでいる。以上の点から、マウスの光生理応答の研究についても本年度以降は順調に進捗すると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
マウスOPN4の分子機能に重要なアミノ酸残基を明らかにするため、引き続き培養細胞系を用いた変異体解析を行う。昨年度に解析した2つの変異体(Y224FおよびY309F)については、細胞内シグナル伝達効率についてさらに詳細な解析を行う。具体的には、カルシウムおよびcAMPについて、光依存的な濃度上昇の速度および、定常状態における濃度を野生型OPN4と比較する。さらに、脊椎動物型ロドプシンの活性化メカニズムにおいて重要な他のアミノ酸残基(Glu122およびIle189など)について、これらと相同な残基に変異を加えた変異型マウスOPN4を作製する。このような変異体を発現した培養細胞のシグナル伝達効率(カルシウムおよびcAMP濃度)を測定することで、マウスOPN4におけるこれらのアミノ酸残基の役割を明らかにする。 次に、OPN4の分子特性がマウス個体の光生理反応に与える影響を検証するため、変異型マウスOPN4を網膜神経節細胞に発現したマウスの光生理応答を測定する。昨年度は、変異型OPN4を発現するためのアデノ随伴ウイルス(AAV)の作製の条件検討を行い、その結果十分な力価を持つと考えられるAAVの作製法を確立した。本年度はまず、野生型OPN4を発現するためのAAVを作製し、OPN4ノックアウトマウスの眼球にこのAAVをインジェクションすることで、ノックアウトマウスの光生理応答をレスキューする実験を行う。その後、昨年度に着目した2つの変異体(Y224FおよびY309F)について同様のレスキュー実験を行い、光生理応答を野生型と比較する。
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