2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K16086
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中尾 裕之 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (00805020)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フリップフロップ / スクランブラーゼ / リン脂質 / 蛍光 / 膜貫通ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜フリップフロップが促進されることによるホスファチジルセリン(PS)の細胞表面への露出は、貪食細胞がアポトーシス細胞を認識するためのシグナルである。最近、細胞生物学的手法により人為的にPSを露出させた場合でも、貪食細胞がPS露出細胞を消化することが明らかになった。細胞に添加するだけでフリップフロップを促進できる物質があれば、がんなどに対して部位特異的に送達することで、PSを露出したがん細胞が周囲の貪食細胞によって消化されるという新たな治療法の開発に繋がる可能性がある。本研究では、これまでの研究で発見したフリップフロップを促進するコア配列を応用し、細胞に添加するだけでフリップフロップを促進するペプチドの開発を行う。本年度はコア配列のN末端にLys、Arg、Glu、Gln、Ser残基を4残基ずつ配置した5種類のペプチドを作製した。モデル膜系である脂質小胞(リポソーム)にペプチドを添加すると、ペプチドが膜に挿入され膜貫通構造をとることを分光学的手法により確認した。さらに、5種類すべてのペプチドが挿入された膜のフリップフロップを促進することを蛍光消光法により明らかにした。一方でネガティブコントロールのペプチドでは膜に挿入されるものの、フリップフロップの促進は観測されなかった。また、HEK293細胞にペプチドを添加したところ、Lys残基をもつフリップフロップ促進ペプチドとLys・Arg残基をもつネガティブコントロールペプチドにおいて細胞毒性が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル膜系の実験により、今回作製したペプチドは外部から脂質膜に挿入することが可能であり、挿入された膜のフリップフロップを促進することが明らかになった。また、一部のペプチドを細胞に添加すると毒性が見られたことから、これらのペプチドが細胞に何らかの影響を与える可能性を示した。これらのことから、本研究課題は当初の研究計画通りに進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は細胞膜のフリップフロップが促進され、細胞表面に露出したホスファチジルセリンに特異的に結合するタンパク質を用いることで、ペプチドの細胞膜フリップフロップ促進能を評価する。さらに蛍光標識したペプチドを用いて、細胞に添加したペプチドの局在についても評価する。
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Causes of Carryover |
ペプチド合成器を1台購入する予定であったが、研究室既存の合成器が混雑していなかったため、購入を見送った。翌年度は、細胞実験により多くのペプチドが必要となるため、ペプチド合成器を購入する予定である。
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