2019 Fiscal Year Research-status Report
Physiological role(s) of light-dependent, rhodopsin-independent PKA activity change in retinal rod photoreceptor cells.
Project/Area Number |
19K16087
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 慎哉 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (50814894)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 二光子顕微鏡 / 蛍光イメージング / Protein Kinase A / 視細胞 / 網膜 / ロドプシン / 光生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス網膜で光に応答して観測されたProtein kinase A (PKA) の活性化について研究し、その組織内局在と分子メカニズムに関して多数の知見が得られた。 組織内局在:スポット光照射装置を製作し、顕微鏡システムに組み込むことで顕微鏡下の網膜試料に任意の波長・強度・時間のスポット光を照射する実験系を確立した。その上で、PKA活性を可視化する遺伝子組み換えマウス、PKAchuから単離した網膜に光刺激を与え、その周辺を5次元的(xyz + 時間 + PKA活性)に観測したところ、照射部位にある桿体視細胞だけがPKAの活性化を示した。 分子メカニズム:光による桿体PKA活性化には非常に強い光が必要だと分かった。これは月明りのような暗い光条件の下で視覚機能を発揮する桿体の性質から考えると意外な結果であった。さらに、様々な波長の光に対する桿体PKA活性化の光感度を測定したところ、予想外にロドプシンの吸収スペクトルとほぼ一致する感度スペクトルを得た。そこで研究計画を変更し、ロドプシンの関与を検討することにした。残念ながら、ロドプシンのノックアウトマウスは視細胞変性の表現型を示すため、検討に使用できない。そこで、ロドプシン下流のシグナル伝達を欠損する、Gnat1-/-ノックアウトマウスを調達して、ロドプシンシグナルを欠損するPKAchuマウスを作製した。光応答観測の結果、この新規マウスからは光によるPKA活性化は観測されなかった。この結果もロドプシンの関与を強く支持する。さらなる補強データとして、ロドプシンの大半が失われた状態にしたアルビノ系統PKAchuの網膜を使用した場合も、光によるPKA活性化は観測されなかった。 まとめ:ロドプシンには、暗い環境での視覚を司る第一の役割に加え、明るい環境で桿体PKAの活性化を引き起こす第二の機能がある、という仮説を提案する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初、ロドプシンの関与を否定する予備実験データから始まり、未知の網膜光受容体を発見するという目論見で始められた。したがって、ロドプシンの関与がほぼ確定的となった現在、当初目標の達成はほぼ不可能となった。しかしながら、応答に強い光が必要とされるという、ロドプシンの通常の役割から考えると予想外のデータを得た。加えて、二光子顕微鏡の高い空間解像度と深部到達性を生かし、網膜の表面から最深部までのPKA応答を同時にタイムラプス観測する5次元イメージングを行い、光を受容した桿体視細胞だけが応答を生じることを画像や動画の形で明確に示した。弱光下で視覚を司るロドプシンが意外にも、強光下で第二の機能であるPKA活性化を司る、という本研究が提唱するモデルは言い換えると、既知の光応答機構の新規機能を発見したことになり、「(2)おおむね順調に進展している。」に相当すると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、これまでの成果を論文にまとめて発表する。本報告書提出時点で原稿準備がほぼ完了し、1カ月以内に提出する予定となっている。 次に、本研究計画で提示した最後の目的である「マウス桿体・錐体の暗順応に対するPKAの影響を電気生理学的な方法で明らかにする」という課題に取り組む。2020年4月時点で測定機器の整備をおおむね完了し、マウス単離網膜からの生体外光応答測定が可能となった。そこで、PKA活性を人為的に変化させた網膜から光応答測定を行って、イメージングで得られたデータに対応する生理学的なデータを加える。これにより、光によるPKA活性化が網膜の光感度にどのような影響を与えるのか評価する。
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