2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of In-cell Native MS for structural biology
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19K16091
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
末松 和美 (七種和美) 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (60608769)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ネイティブ質量分析 / 不揮発性緩衝液 / タンパク質複合体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では質量分析を用いた細胞内のタンパク質の構造解析手法の確立“In-Cell Native MS”の確立するため、平成31年度は 様々な緩衝液における条件検討を計画した。 そのため、まずタンパク質複合体の相互作用様式が異なるアルコール脱水素酵素(ADH、疎水性相互作用のみ)、ヌクレオソーム(NCP、疎水性相互作用と静電相互作用)を用いて不揮発性緩衝液での測定を行った。その際、不揮発性緩衝液に酢酸アンモニウムを加える方法をとった。ADHでは、Tri-HCl、リン酸緩衝液など4つの緩衝液で測定を試みた。その結果、どの緩衝液を用いた場合でも測定が可能であり、観測された価数から同様の構造を持つことが予想された。一方、NCPでは精製に用いるTris-HCl存在下での測定を試みたが、ADHの場合よりも低い酢酸アンモニウムの濃度で分解能のよいピークが得られることがわかった。このように酢酸アンモニウムによって測定が可能になった現象はタンパク質のイオン化のメカニズムであるcombined charged residue-field emission model (CCRFEM)から説明でき、相互作用による違いは相互作用様式の違いにおける塩の交換効率の違いによると考えられた。 また、次年度の研究計画である大腸菌発現されたジヒドロ葉酸還元酵素DHFRの細胞内環境におけるネイティブ質量分析を研究協力者である明石知子准教授と行った。この場合も上記と同様にサンプルに酢酸アンモニウムを添加する方法を用いた。本研究で最も鍵となったのは、測定に用いるサンプルのソニケーション時間であり、ソニケーションの時間を0とすることで夾雑物として混入するDNAを最小限にすることができた。さらに、本方法を用いてDHFRを様々な化合物と相互作用させた実験を行った結果、特定の基質のみ相互作用したDHFRが観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画に沿った研究を遂行し、研究成果についての国際論文への投稿、および採択が決まったため。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目は2年分で計画した研究を進められたが、1年目で計画した不揮発性緩衝液の実験もより幅広く行う必要があると考えている。そこで、2年目である今年度は低酢酸アンモニウム濃度では複合体形成しにくいH2A-H2B二量体などのタンパク質を対象に不揮発性緩衝液の実験を行うとともに、もう一つの手法である先端口径の小さいキャピラリーの実験についても行う予定である。また、大腸菌発現したサンプルを用いた実験では、共発現系を用いた実験を計画していたため、H2A-H2B二量体などのタンパク質複合体を用いて実験を遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
使用額に差が生じた理由としては、(1)今年度購入を予定していたキャピラリープラーが平成31年度に着任した職場で所有されていたため、購入の必要性がなかったため。(2)所属が変更したことによって測定を行う横浜市立大学への出張に伴う旅費がかからなくなったため。の2点が挙げられる。 使用計画については、旅費などの当初予定していた予算の不足分にあてるとともに、作成したキャピラリーのコーティング装置等に実験に関する装置や消耗品にあてる予定である。
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Research Products
(1 results)