2019 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍ウイルス感染に伴うエピゲノム異常による発癌機構の解明
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19K16101
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
岡部 篤史 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (80778118)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | クロマチン構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
Epstein-Barrウイルス(EBV)陽性胃癌を対象とし、ウイルス感染に伴うエピゲノム異常、クロマチン構造異常を明らかにし、癌化への寄与を解明することを目的とし、研究を進めた。EBV感染前後においてChIP-seq法によって活性化ヒストン修飾(H3K4me1, H3K4me3, H3K27ac), 抑制的ヒストン修飾(H3K27me3, H3K9me3)を取得し、ウイルス感染が誘導する変化を同定した。更にEBV感染前後におけるクロマチン構造変化をHi-C法によって検出し、近年発現制御との関連が報告されているクロマチンコンパートメントとドメイン構造を計算し、ウイルス感染による変化を同定した。これらのエピゲノム変化、クロマチン構造変化を統合的に解析し、特にウイルス感染によってヘテロクロマチン構造が消失し、エンハンサーとして活性化することを見出した。更にこのヘテロクロマチンの活性化にはEBVゲノムとの直接的な相互作用が関与していることを明らかにした。活性化したエンハンサー領域が近傍遺伝子の転写活性化に寄与していることを確認するため、エンハンサー領域と近傍遺伝子の直接的な相互作用を4C-seq法によって検出すると共に、活性化エンハンサー領域を標的としてCRISPR/Cas9システムによるゲノム編集を行い、確かにエンハンサーとして転写調節に寄与していることを確認した。このEBVゲノムとホストゲノムとの相互作用によって活性化されるエンハンサー標的として、TGFBR2, MZT1を同定した。これらの遺伝子は公共データベース上のEBV陽性胃癌臨床サンプルで高発現していることが確認されると共に、我々が解析したEBV陽性胃癌臨床サンプルでの免疫組織染色においてもタンパク質レベルでの有意な高発現が確認された。本研究成果について論文投稿を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和元年度に予定していたエピゲノム異常及びクロマチン構造異常については解析をほぼ終了し、その中でヘテロクロマチンの構造破綻に伴うエンハンサー活性化を明らかにした。更に令和2年度に予定していた領域選択的なゲノム・エピゲノム編集による検証について、異常活性化エンハンサー領域をゲノム編集することによって近傍遺伝子の発現を抑制することを確認した。令和2年度に予定していた胃癌臨床検体による発現の検証についても、エピゲノム異常に伴って異常発現亢進が認められる遺伝子について免疫組織染色によるタンパク質レバルでの検証を行った。以上のように、令和元年度に予定した計画を完了することができただけでなく、令和2年度に予定していた計画も前倒しで実行できており、当初の計画以上に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘテロクロマチン領域におけるエピゲノム異常とクロマチン構造異常に注目し、その癌悪性化への影響を明らかにしたが、ヘテロクロマチン以外のクロマチン構造変化やエピゲノムの変化について更に解析を進める予定である。現在、DNAメチル化とCTCF結合によるドメイン構造の変化による遺伝子制御異常について解析を進めている。この解析で同定されたドメイン異常とCTCF結合領域について、ゲノム編集による検証を進めると共に、エピゲノム編集による検証も検討していきたい。
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