2020 Fiscal Year Research-status Report
出芽酵母とリポソームの融合によるin vitro核モデルの開発
Project/Area Number |
19K16103
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
辻 岳志 福井大学, 学術研究院工学系部門, 助教 (30803605)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リポソーム / 染色体 / 脂質膜融合 / 脂質膜孔形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、(1)昨年度に確立した出芽酵母とリポソームの融合法の改善と、(2)リポソームの膜孔を介したタンパク質除去・供給法を確立した。(1)では、昨年度と同様、染色体の構造タンパク質の一つであるヒストンタンパク質と緑色蛍光タンパク質(GFP)を融合した出芽酵母株を用いて、細胞壁を取り除いたプロトプラストと赤色の蛍光脂質を混ぜたリポソームを凍結融解操作によって融合した。この時に、融合率はフローサイトメーターを用いた解析では3% 程度であるが、蛍光顕微鏡を用いたリポソーム内にヒストンが内封された構造はリポソーム全体に対して1%未満であった。一方で、出芽酵母を非栄養培地、4℃条件で一晩培養した後に融合操作を行うと、フローサイトメーター上では10%前後、蛍光顕微鏡では1%の融合構造体が確認された。次に、出芽酵母とリポソームの融合によって得られた構造体には染色体だけでなく、様々なタンパク質が含まれていることが予想される。リポソーム同士の融合では内液は50%残存することが分かっており、出芽酵母の細胞質に含まれる様々な因子が50%ほど融合後にも残ることが考えられる。そこで、(2) リポソーム膜を介した内液の除去法を開発した。この方法では、コレステロール依存的に脂質膜に孔を形成することが知られているStreptolysin O (SLO) を用いてリポソーム膜に孔を開け、90 kDa程度のT7 RNA polymeraseを外液から供給して、RNA 合成反応を駆動させた。また、内部に入れていた80 kDa の蛍光タンパク質を流出できることも確認し、学術論文として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、融合率の改善、染色体構造の内封を達成し、リポソーム内液のタンパク質除去・供給法を確立したことを学術論文として発表したため、順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、リポソームと出芽酵母由来の核あるいはマウス培養細胞微小核を融合させ、リポソーム内染色体モデルを確立する。その後、本年度得られたリポソーム内核モデルに対して、核膜の機能や、リポソーム内染色体構造を外部からの添加物によって変動させるかについてレポータータンパク質を指標に調べる予定である。この時、リポソーム内に封入したT7 RNA polymerase 依存的なタンパク質の合成や、染色体構造依存的にタンパク質合成量が変動するかについて無細胞翻訳系を用いて検討する。
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