2019 Fiscal Year Research-status Report
翻訳制御を基盤とした大規模な哺乳類細胞コンピューティングの実現
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19K16110
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川崎 俊輔 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (10816036)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 合成生物学 / 翻訳制御 / RNA/RNP / 細胞コンピューティング |
Outline of Annual Research Achievements |
大規模な人工遺伝子回路は、細胞機能を自在に制御できるため、合成生物学及び医療研究において注目されつつある。中でも安全性、設計の容易さ、応用可能性の豊富さを兼ね備えている「翻訳を制御できる遺伝子回路の構築」が望まれている。本研究では、1.RNAエンジニアリングを用いた新規翻訳制御デバイスの発明と拡充を行い、2. 翻訳制御デバイスを組合せた高度な遺伝子回路の構築原理の解明を目指す。そこで、本年度は計画に従って、「新規翻訳制御デバイスの拡充」を行った。mRNAの5'非翻訳領域 (UTR)に、RNAエンジニアリングによって改変したアプタマー(特異的なタンパク質と結合するRNA配列)を挿入することで利用可能なデバイスを5つ開発した。これらのデバイスは、大規模な人工遺伝子回路を構築する上で必要な高い直交性(特定の入力にのみ応答すること)を有していることを確認した。この成果は、共同第一著者としてACS Synthetic BIologyに発表し、同誌の表紙にも採択された。この成果に加えて、あるRNA結合タンパク質を利用することで、さらに追加で25種類のデバイスが開発できた。この成果は、2019年度分子生物学会年会にて報告済みである。今後は、まず、これらのデバイスが、高い直交性を有し、大規模な翻訳制御回路の構築に利用可能かどうか検証する。さらに、開発した人工分子デバイスを組み合わせ、2入力の論理回路と演算回路といった人工遺伝子回路を構築・試験していく。これにより、大規模細胞コンピューティングを実現するための基本的な枠組みを明らかにし、それを達成するために要求される回路素子の特性も明らかにする予定である。このようにして構築した遺伝子回路によって、将来的には治療機能を持つ細胞の挙動や、遺伝子治療薬の機能を正確にプログラム可能となり、精密医療や副作用の少ない医薬品開発に大きく貢献する成果がもたらされると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題はおおむね順調に推移している。その理由として以下の点があげられる。 1. RNAエンジニアリングによって改変したアプタマー利用することで、人工遺伝子回路に必要な分子デバイスを5つ開発し、共同第一著者として論文発表した (Ono et al. ACS Syn. Biol. 2020)。この成果は、雑誌の表紙にも採用されている。これにより、当初計画していた10種類のデバイスの半分が、作製できたことになる。 2. あるRNA結合タンパク質を利用することで、25種類の分子デバイスを開発した。また、この成果は、2019年度分子生物学会年会にて発表した。これにより、当初計画していた10種類のデバイスを大幅に超える数の拡張が達成できた。現在、これらのデバイスが、人工遺伝子回路に利用できるかどうか、機能特性を試験中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 新たに開発した25種類のデバイスが、人工遺伝子回路に利用できるかどうか、機能特性を試験する。 2. 利用可能なデバイスを組み合わせ、基本論理回路、および演算回路を構築する。 3. 複数の回路を組み合わせより複雑な計算を哺乳類細胞中で実行する。
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Causes of Carryover |
多くの遺伝子を利用を計画していた遺伝子合成委託サービスではなく、Addgenを利用し、より安価に材料を購入できたため。また、Addgenの購入に際して、別予算にて一括購入する必要があったため。 また、次年度は細胞実験において必要な、試薬や培地などの購入に使用するほか、実験補助者の人件費に充てる。
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