2019 Fiscal Year Research-status Report
大規模マイクロサテライトデータベースと自動解析処理システムの構築
Project/Area Number |
19K16113
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
田中 啓介 東京農業大学, その他部局等, 助教 (60747294)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マイクロサテライト / SSR / NGS / データベース / 解析パイプライン |
Outline of Annual Research Achievements |
DNA配列の一部に含まれる単純反復配列(マイクロサテライト、SSR)領域は、その反復数が対象生物の系統間や個体間で違い(多型性)を示すことからDNAマーカーとして役立っている。そこで本研究は、「【1】500種の生物を対象としたマイクロサテライトデータベース構築」、「【2】in silico多型解析法の開発と解析パイプラインの構築」として、これら2つの目的を掲げて実施している。以下、これら目的に対して今年度に実施した成果を示す。 【1】我が国の研究者にとって有益なマイクロサテライトデータベースの構築を目指すために、申請者の所属学会や研究者間コミュニティ、知人を介した周知により、マイクロサテライト情報の需要がある生物種に対するDNAサンプルの募集を行った。サンプル提供者には、本研究の趣旨に対する理解を得た上で、提供サンプルから得られたデータはデータベース公開前であっても提供者が利用できるよう互いの利益になるよう進めた。現状では、目標のおおよそ半数の個体を集めることができた。これらは順次、申請者が考案した実験系(Microsatellite capture sequencing)を適用し、次世代シーケンサー(NGS)を用いて配列データを出力した。さらに、これらデータを公開するためのウェブページの制作を行い、カタログ形式によるデータベースの基盤をつくった。 【2】in silico多型解析の構想は、シーケンスによって得られたデータから対象生物種の系統間や個体間の多型性を比較することである。そのために、まずは個々のマイクロサテライト領域に対するプロファイル情報が必要となる。NGSによって得られた配列データからマイクロサテライト情報を得るために、データクリーニング、ペア配列の一本化、重複配列の除去、マイクロサテライト領域の識別が行われる。今年度は、これら一連の工程をパイプライン化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、2年計画で完遂することを目指している。初年度に当たる2019年度には、マイクロサテライトデータベースに載せる500種の生物に対するDNAサンプルのほとんどを解析する予定であったが、実際には半数ほどが集まる状況となった。そこで本研究は、全ての計画を並行して行うことに切り替え、次年度に計画していたデータベースを公開するためのウェブページの基盤を構築した。さらに、in silico多型解析法の解析パイプラインのうち、個々のマイクロサテライト情報をプロファイリングするところまでできた。以上の内容から、本研究の全体目標のうち、半分ほど遂行できていると考えられるため、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロサテライトデータベースに載せる予定の500種を達成するために、今年度もDNAサンプルの募集を広く行う予定である。その一方で、最近の文献等によりDNAマーカーとして需要のありそうな生物種を選定し、自身でもサンプル収集を行うことで、よりデータベースの充実化が図れるだろうと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究が使用する研究助成金には物品費が多くを占めており、DNA配列データを出力するために必要となる実験用の試薬類がこれに該当する。当初の研究計画では、データベースに載せる目標の500サンプル近くのDNA配列解析を初年度に行う予定であったが、実際には目標の半分ほどのサンプルを収集した状況となった。さらに、DNA配列を解析する実験には一度に100サンプル以上を含める方が効率的であるため、この実験の直前の段階で待機状態になっているサンプルもある。以上のことから、2019年度は想定よりも実験試薬の消費が抑えられてしまったため、翌年度分として請求することとした。2020年度には、さらにサンプルを追加するので、待機状態のサンプルと共に円滑に実験を進めていく予定である。
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