2023 Fiscal Year Research-status Report
細胞外マトリックス・ビトロネクチンによる肝星細胞活性を介したNASH病因の解明
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19K16122
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
橋本 恵 お茶の水女子大学, ヒューマンライフサイエンス研究所, 特任講師 (50835733)
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Project Period (FY) |
2021-11-01 – 2025-03-31
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Keywords | Vitronectin / 肝障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、ビトロネクチンが肝炎を誘導するメカニズムの解明を目的とし研究を行なった。これまでに、非アルコール性脂肪肝炎モデルビトロネクチンノックアウトマウス肝組織を用いて、ビトロネクチン欠損は脂質代謝関連因子の発現変動を誘発しないことを発見し、ビトロネクチンは肝炎において脂質蓄積ではなく炎症・線維化に関わる過程に作用すると示唆された。そこで、脂質蓄積を原因としない肝炎モデルを作製するために4週間および8週間四塩化炭素を腹腔投与することで四塩化炭素誘導型肝炎モデルビトロネクチンノックアウトマウスを作製し、ビトロネクチンが四塩化炭素誘導型炎症・線維化を制御するかどうかを検証した。ビトロネクチンノックアウトマウスでは、四塩化炭素を投与し肝障害を誘発すると、野生型よりも顕著な肝細胞壊死に加えて、重度な浸潤や線維化が示された。さらに、四塩化炭素を投与したビトロネクチンノックアウトマウス肝臓からRNAを抽出しトランスクリプトーム解析を行ったところ、四塩化炭素誘導型肝炎モデルビトロネクチンノックアウトマウスは、薬物代謝経路や細胞外マトリックスに関連する遺伝子変動が多く観察された。このことから、ビトロネクチン欠損により、肝細胞における四塩化炭素の薬物代謝や肝星細胞活性による線維化成分合成が影響を受け、肝障害を悪化させることが示唆された。また興味深いことに、ビトロネクチンノックアウトマウスでは、高脂肪食により肝炎が抑制されたことに対して、四塩化炭素により肝炎が促進されており、肝炎を誘発する起点によって異なる表現型を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ビトロネクチンノックアウトマウスにおける肝障害が顕著にあらわれたことから、進捗は概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ビトロネクチンが四塩化炭素による肝細胞壊死および肝星細胞活性による線維化成分合成を制御するメカニズムを解明する。具体的には、ビトロネクチンノックアウト肝細胞が四塩化炭素による小胞体ストレスを過剰に受けることで壊死が引き起こされること、さらに、ビトロネクチンノックアウト肝星細胞が活性化するシグナル経路の解明を行う。
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