2019 Fiscal Year Research-status Report
低温暴露時に見られる新たな脂質代謝活性化機構の解明
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19K16124
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 有希 京都大学, 生命科学研究科, 特定助教 (80814904)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 低温応答 / 脂質代謝 / リノール酸 / エネルギー代謝 / PPARα |
Outline of Annual Research Achievements |
低温への適応は動物の生命活動の維持に極めて重要な生体応答の一つである。しかし、低温の影響を評価するための決定的な細胞実験系の欠如から、どのような分子機序によって低温応答が制御されているかについては、ほとんど理解が進んでいない。申請者は、これまでの研究において、リノール酸(脂肪酸の1種)を含む栄養飢餓条件下で培養した細胞を低温に数分間暴露させると、その後の飢餓において脂質代謝が活性化され細胞死が遅延することを見出した。 初年度(2019年度)では、この細胞の低温応答を対象として、生化学的・分子生物学的手法により低温による脂質代謝活性化の分子機序の解明を行なった。その結果、リノール酸代謝酵素(D6D)などの脂質代謝関連酵素の発現誘導を司る分子として知られるα型ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPARα)の発現が数分間の低温への暴露により誘導されることが明らかになった。さらに、低温によるPPARα誘導がリノール酸からアラキドン酸を生産するD6Dの発現を誘導し、アラキドン酸がPPARαの生理的なリガンドとしてPPARαの発現をさらに増強することが明らかになった。即ち、本現象に見られた脂質代謝活性化はPPARα-D6D-アラキドン酸を介した正のフィードバックによって制御されていることが明らかになった。これらの結果は論文としてとりまとめ、国際誌(Scientific report)に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度で本研究の実施計画目標に挙げていた「低温による脂質代謝活性化の分子機序の解明」を達成できた。従って、本研究は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では本研究の実施計画目標に挙げた低温ストレス応答トリガー因子の同定を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 新型コロナウイルスのため、予定していた出張をキャンセルし、旅費に使用する金額が少なかったため。また、研究が当初の想定より順調に進み、消耗品等に使用する金額が予定を下回ったため。 (使用計画) 次年度に、実験に使用する消耗品(物品費)として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)