2019 Fiscal Year Research-status Report
新規な網羅的定量解析系を用いた酵母の活性窒素種シグナルの総合的理解
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19K16129
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
那須野 亮 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (90708116)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 翻訳後修飾 / ニトロ化 / S-ニトロソ化 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質ニトロ化の網羅的定量解析系を構築するため、酵母を酸性条件下で亜硝酸処理したところ、酵母の全タンパク質のニトロ化レベルが顕著に亢進した。続いて、Fluorinated Carbon-tag(FCT)法(Proteomics, 15, 580-590, 2015)による解析を試みたが、ニトロ化タンパク質は同定できなかった。そこで、ニトロ化条件で処理したタンパク質抽出液をトリプシン消化し、直接LC-MS/MSに供したところ、複数のニトロ化タンパク質とニトロ化部位を同定した。また、同条件で処理した酵母の代謝物を解析したところ、多くの代謝物の細胞内含量が亜硝酸処理により変化したことから、タンパク質ニトロ化が代謝酵素の活性制御等に関与する可能性が示唆された。一方、タンパク質S-ニトロソ化を網羅的に解析するため、酵母タンパク質抽出液をNOドナーで処理し(in vitro)、ビオチンスイッチ法とLC-MS/MSに供したところ、数多くの代謝酵素がS-ニトロソ化されることが示唆された。続いて、既知および改良型のビオチンスイッチ法により、NOドナー処理した酵母から得たタンパク質抽出液(in vivo)を解析したが、タンパク質S-ニトロソ化は検出されなかった一方、システイン残基に別の酸化的修飾が起こっていることが示唆された。このことから、酵母細胞内ではNOによってS-ニトロソ化とは異なる酸化的修飾が起きる可能性が示された。 修飾タンパク質の定量方法については、解析プログラムの問題から15N-硫酸アンモニウムを用いた系では解析が難しいことが判明したため、アルギニン・リジン要求性株を構築し、安定同位体ラベルしたアルギニン・リジン含有培地で培養し、SILAC法により定量解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた方法は機能しなかったものの、代替案として試みた手法により、ニトロ化タンパク質、S-ニトロソ化タンパク質の網羅的解析方法が確立できた。また、定量解析についても、代替案であるSILACにより可能となった。一方、複数のニトロ化タンパク質を同定し、その一部についてはすでに個別解析で再現性が取れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現状では、ニトロ化タンパク質の網羅的解析には成功したものの、網羅的かつ定量的な解析には至っていない。SILAC法により定量方法には問題ないが、全タンパク質中のニトロ化タンパク質量が少ないことが問題と考えられる。これは、これまでの解析では、ニトロ化タンパク質の濃縮を行わずに解析したためと考えられる。計画当初の解析方法であるFCT法では、ニトロ化タンパク質の濃縮も工程に含まれていたが、代替案ではこれが無い。したがって、ニトロチロシン抗体を用いた免疫沈降を組み合わせることで、ニトロ化タンパク質の濃縮を行い、網羅的定量解析を行う。また、既に同定されたニトロ化タンパク質については、in vitroでニトロ化タンパク質を調製して機能解析するとともに、変異型タンパク質の発現株の表現型評価から生理機能を解析する。 S-ニトロソ化タンパク質については、in vitroでのS-ニトロソ化タンパク質の同定には成功したものの、in vivoではS-ニトロソ化とはことなる酸化的修飾が亢進することが示唆された。今後は、この酸化的修飾が何かを明らかにするとともに、その生理機能や制御の作用機構を明らかにする。 上記以外の部分については計画書通りに遂行する予定である。
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