2020 Fiscal Year Research-status Report
ゴルジ体ストレス応答の新規応答経路を制御する因子の網羅的同定
Project/Area Number |
19K16131
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
佐々木 桂奈江 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 助教 (80752427)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ゴルジ体 / ストレス応答 / 糖鎖修飾 / プロテオグリカン / 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ゴルジ体でO型糖鎖修飾されるプロテオグリカン(PG)に焦点を当て、O型糖鎖修飾の能力を増強させるストレス応答(PG経路)の詳細な分子機構を解明することを目的とし、以下の実験を行った。 PG経路の転写制御配列PGSEに結合する転写因子を同定するため、転写因子結合配列データベースを用いたin silicoスクリーニングを行なったところ、転写因子候補としてKLFファミリーに属する複数の転写因子が抽出された。KLFファミリーの中でも特にKLF2やKLF4において、それらを過剰発現させるとPGSEの転写活性が上昇し、転写活性ドメインを欠損させたドミナントネガティブ変異体を発現させると、PGSEの転写活性が抑制されることが明らかとなった。また、PG経路特異的なゴルジ体ストレス条件下において、KLF2及びKLF4のmRNA量、タンパク質量がともに増加することが明らかとなった。これらの結果からKLF2及びKLF4が、ゴルジ体ストレス依存的に自身の量が増やされることによって、PGSE活性を制御している可能性が示唆された。しかし、KLF2/4のダブルノックアウト細胞でPGSE活性が抑制されなかったことから、PGSE活性を制御する他の転写因子の存在も示唆された。 PG経路の転写因子やストレスセンサーなどの制御因子を網羅的に同定するために、CRISPR-Cas9システムにより作製したヒトの全遺伝子ノックアウト細胞群を用いた網羅的スクリーニングも行う予定である。PGSEの下流にコレラ毒素(DT-A)遺伝子をつないだコンストラクトでは活性の差を検出することが困難であったため、DT-Aの代わりにEGFP遺伝子を使用し、FACSを用いてスクリーニングを行うことにした。現在、PGSEを含む複数の標的遺伝子プロモーターを数種類試し、最適なコンストラクトを作製中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究により、in silicoスクリーニングで得られた転写因子候補の中から、KLF2及びKLF4がゴルジ体ストレス依存的なPGSE活性を制御する可能性を示すことができたため、研究の進捗状況としては順調に進展していると考えられる。しかし、PGSE活性を制御する転写因子がKLF2やKLF4以外にも存在する可能性が示されたため、転写因子等を含むPG経路の制御因子を同定するためのゲノムワイドスクリーニングの実行が重要であると考えられる。 ゲノムワイドスクリーニングの進捗状況としては、現在PG経路の転写制御配列PGSEの転写活性をモニターするコンストラクト(PGSE-EGFP)を作製中の段階である。PGSEのみを入れた場合とPGSEを含むPG経路の標的遺伝子のプロモーター領域(転写開始点から約1000 bp上流の領域)を入れた場合とでは、後者の方がゴルジ体ストレス依存的なEGFPの蛍光シグナルの差を検出しやすいことがわかったため、様々な標的遺伝子のプロモーター領域を試し、最適なコンストラクトを作製中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、まずPG経路の制御因子を同定するためのゲノムワイドスクリーニングを実行することでさらなる進捗を図る。現在PGSE-EGFPを用いたスクリーニングの準備段階ではあるが、コンストラクト完成後からスクリーニング実行までには数回の安定発現細胞株の樹立が必要になるなど、かなりの時間を要すると考えられる。PG型特異的な糖鎖修飾阻害剤(4MU-xyloside)によるゴルジ体ストレスは最終的に細胞死を引き起こすことから、薬剤添加による細胞死を選択圧としたスクリーニングについても同時に準備を進めている。このスクリーニング方法は細胞死を誘導する他経路のゴルジ体ストレス誘導剤ですでに実行しており、ゴルジ体ストレス制御に関わる因子が複数取れてきていることから、非常に有用な方法であると考えられる。
|
Research Products
(4 results)