2021 Fiscal Year Research-status Report
生体内血管リモデリング:血流刺激に対する血管内皮細胞の感知応答機構の解明
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19K16140
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高瀬 悠太 京都大学, 理学研究科, 特定助教 (70756478)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生体内血管リモデリング / 血管パターニング / トリ胚 / ALK1 / 血流ずり応力 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、前年度の結果から血流刺激の感知・応答に関わる分子群として働くことが示唆されたTGFβ受容体ALK1/ENGについて更なる検証を実施した。具体的には、トリ胚血管網におけるsiRNAノックダウン実験の結果をより適切に評価するために、培養細胞を用いたsiRNAのノックダウン効率の評価と、標的siRNAに耐性を持たせた変異型ALK1/ENG mRNAを用いたレスキュー実験を行った。その結果、ALK1についてはsiRNAノックダウンの表現型をmRNAの共導入によってレスキューできたため、ALK1に焦点を絞って以降の解析を行った。 まず、ALK1の上流候補として、化学的刺激(リガンド分子)と物理的刺激(血流による摩擦力や圧力)の役割について改めて解析した。その結果、物理的刺激がALK1を介した動脈リモデリングに関わることが示唆された。続いて、ALK1の下流候補として、細胞骨格制御因子RhoAとの関連性を解析した。その結果、ALK1の下流でRhoAの活性が変化することで動脈リモデリングが起こる可能性が示唆された。 この他、前所属研究機関で携わった研究の論文化および教育活動の書籍化について、執筆が編集などに従事した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、前年度の結果から血流刺激の感知・応答に関わる分子群として働くことが示唆されたTGFβ受容体ALK1/ENGについて更なる検証を実施した。具体的には、トリ胚血管網におけるsiRNAノックダウン実験の結果をより適切に評価するために、培養細胞を用いたsiRNAのノックダウン効率の評価と、標的siRNAに耐性を持たせた変異型ALK1/ENG mRNAを用いたレスキュー実験を行った。siRNAのノックダウン効率および変異型ALK1/ENGのsiRNA耐性については、以前に確立した実験系(Takase & Takahashi, 2019)を活用してスムーズに評価できた。しかし、トリ胚血管網におけるレスキュー実験に関しては、mRNAの合成および導入条件が難しく、難航した(mRNAの導入量が多すぎるとノックダウンと似た表現型を示すため、オフターゲット効果の可能性なども検討した)。最終的に、ALK1に関してはノックダウンの表現型をレスキューできることが確定したため、以降の解析はALK1に焦点を絞った。 まず、ALK1の上流候補として、化学的刺激(リガンド分子)と物理的刺激(血流による摩擦力や圧力)の役割について改めて解析した結果、化学的刺激に関しては BMP9/10に加えてTGFβ1も動脈リモデリングに対して負に働くことが見出された。物理的刺激に関しては、メカニカルイオンチャネル群の阻害剤スクリーニングの結果、TRPM7/8がALK1を介した動脈リモデリングに関わることが示唆された。続いて、ALK1の下流候補として、細胞骨格制御因子RhoAとの関連性を解析した。具体的には、ALK1に対するsiRNAノックダウンとRhoAの活性化阻害剤/促進剤の共導入などを行い、ALK1の下流でRhoAの活性が変化することで動脈リモデリングが起こる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、当該年度までの結果から見出された動脈リモデリングを牽引するALK1シグナリング(物理的刺激(TRPM7/8)→ALK1→RhoAの活性変化)について、これまでの解析結果を論文として投稿することを第一目的として、論文作成に必要なデータ解析を進めていく。 懸念事項として、今年度から所属研究機関が変わったため、本研究を実施するための実験環境が整っていない。そこで、前所属研究機関との共同研究を実施することで、必要な追加実験などを行う予定である。
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Causes of Carryover |
本来、該当年度中に生体内やin vitro培養環境下で血流刺激を与えることが可能な流体ずり応力刺激装置を購入し、血流刺激の実体解明を進めるための解析系を確立する予定だった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大に伴う活動制限対策と、任期満了に伴う次年度以降の所属研究機関探しのため、関連業者との相談や機器の検討実験に十分な時間が割けられなかった。このため、研究計画を変更した。 現所属研究機関には、本研究課題を遂行するための実験環境が整っていないため、実験環境の整備および流体ずり応力刺激装置の検討に使用する計画を考えている。
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