2019 Fiscal Year Research-status Report
直線状のコラーゲン結晶を基にした骨の2分岐パターンの形成原理
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19K16142
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
黒田 純平 大阪大学, 生命機能研究科, 特任研究員 (80726521)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | コラーゲン / 骨形成 / 骨芽細胞 / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究はゼブラフィッシュを用いてヒレ骨が成長とともに2分岐するメカニズムを明らかにすることを目的としている。計画ではまずヒレ骨の直線的な成長を支えるコラーゲン結晶体であるアクチノトリキアと細胞の相互作用を培養下で明らかにすることを最初の目標としており、この研究で明らかになった細胞の挙動、機能について日本発生生物学会、日本生物物理学会にて発表を行うことができた。またこれらの結果について論文執筆を行い始め、投稿の準備が整いつつある。 次に、生体内における各種細胞とアクチノトリキアとの立体的な相互作用について明らかにするために、理化学研究所・岩根ユニットリーダーとの共同研究をすすめ、連続電顕法を行うことで細胞とアクチノトリキアの詳細な3D形態について明らかにすることに成功している。この結果は、理化学研究所のリトリートにて発表をしている。 また、骨芽細胞とアクチノトリキアの相互作用について明らかにするために、新たな可視化ゼブラフィッシュ系統を作製し樹立した。 申請者はこの新規の可視化ゼブラフィッシュ系統を用いて、金沢大学、小林准教授との共同研究により成体における骨のライブイメージングを行うことにも成功している。 この成果は共同研究として、国際学術誌であるCommunications Biology誌に論文が受理された。この系統より骨芽細胞を単離し、ゲルを用いた三次元培養下でライブイメージングする方法を確立した。さらにこの培養系によって、骨芽細胞とアクチノトリキアとの特異的な相互作用について明らかにし、これらの結果について分子生物学会にて発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、まず、ヒレ骨の成長に必須であるアクチノトリキアと直接相互作用すると考えられる各種細胞の生体外での培養・ライブセルイメージングを行うことを始めの目標とした。ヒレ骨の形態形成において中心的な役割を果たすと推測される骨芽細胞、および間葉系細胞の可視化、および培養下でのアクチノトリキアとの特異的な相互作用をとらえることに成功しており、第一の目標を達成することができたと言える。これらの成果についてすでに第一報目の論文の執筆をすすめており、投稿間近にある。 また、生体内の立体的な細胞とアクチノトリキアの相互作用についても理化学研究所、岩根ユニットリーダーとの共同研究によって解析が順調にすすんでおり、この研究結果についても第二報目の論文執筆について構想中である。 もう一つの計画である、アクチノトリキアの自己集合を促進する因子の探索、については当初計画していた方法では研究を円滑にすすめることができず、別の新たな方法について検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの申請者の研究結果から、ヒレ骨の分岐構造の形成においては、骨芽細胞と間葉系細胞がアクチノトリキアに対し物理的な作用を加えることが重要である可能性が考えられる。研究1年目は、主に生体外の培養実験によって明確な細胞と挙動・機能について明らかにすることに成功した。研究2年目は、生体内での各種細胞の物理的な作用について、遺伝的な方法により阻害する計画をたてている。各種細胞が、コラーゲン結晶構造であるアクチノトリキアを物理的に束ねる力が骨のパターン形成に必須であると推測しており、この力を生体内で抑制するために細胞内のアクチン・ミオシンネットワークを阻害する。この研究を行うための組み換え体ゼブラフィッシュの作製をすでに開始しており、研究期間内に骨の分岐構造をつくるメカニズムの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
研究目的の一つであるアクチノトリキアの自己集合を促進する因子の探索が予定していた計画ではすすめることができないと判断した。このため、一年目は別の実験方法についていくつか検討し、計画を立て直した。次年度は新たなアプローチでアクチノトリキアの自己集合を促進する因子の探索・同定を行い、骨の分岐パターン形成との関連について明らかにする予定である。また、これまでに主に培養実験で骨芽細胞と間葉系細胞がアクチノトリキアと物理的な相互作用を示すことを明らかにした。次年度は、生体内でこれらの細胞とアクチノトリキアとの相互作用を阻害する実験を計画しており、これらの研究で骨の分岐構造の形成機構の解明を目指す。またこれらの研究結果をいくつかの論文にまとめ出版する予定をしている。
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Research Products
(5 results)