2019 Fiscal Year Research-status Report
Identification of the targets of nuclear PIWI-piRNA complexes important for the planarian adult pluripotent stem cell system
Project/Area Number |
19K16149
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
鹿島 誠 青山学院大学, 理工学部, 助教 (10780562)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 幹細胞 / プラナリア / PIWI / piRNA / 再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、プラナリア成体全能性幹細胞(aPSC)の維持・制御に重要な遺伝子であるPIWIの機能解明のため、その標的遺伝子の同定を目的としている。PIWIは様々な生物の全能性あるいは多能性幹細胞で発現していることが知られているが、幹細胞におけるPIWIの機能はわかっていない。 プラナリア D. japonicaでは、三種類のpiwi遺伝子(DjpiwiA, DjpiwiB, DjpiwiC)がaPSCで発現しており、遺伝子機能阻害を行った際の表現型(再生不全と幹細胞の消失)はDjpiwiB > DjpiwiC >>> DjpiwiAの順で重篤である。本年度は、これら三種類のpiwi遺伝子及びDjPiwiBのパートナータンパク質をコードしている可能性がある遺伝子の機能阻害を行い、RNAi後から毎日経時的なサンプリングを行った。そして、代表者が開発に携わったLasy-Seq及び独自の多検体RNA抽出手法を用いて、各遺伝子の機能阻害がトランスクリプトームに与える影響を経時的に明らかにした。今後は、より詳細な解析により表現型の重篤さに関わることが期待されるDjPiwiB特異的な標的遺伝子の同定を目指す。 加えて、本年度は、DjpiwiC RNAiがDjPiwiB結合piRNAの産生に関わることを示唆するデータを得ることに成功した。これは、DjpiwiC RNAiで見られる表現型は、DjPiwiBの機能欠損に起因する可能性を示唆するものである。すなわち、二種類のPIWIが共同することによって全能性幹細胞の制御をおこなわれていること初めて示唆する結果を得た。 また、新規にDjPiwiA及びDjPiwiCに対するモノクローナル抗体を作成する共同研究を開始した。IPが可能な抗体の作成が完了すれば、各PIWIに結合するpiRNAの配列をベースにした標的遺伝子の探索が可能になることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、①三種類のpiwi遺伝子のRNAi個体のRNAi処理後の継時RNA-Seq、②組織実験等のよりpiwi RNAi個体の経時的な表現型測定、③DjPiwiBと共同的に全能性幹細胞の制御に関わる可能性がある二種類の遺伝子のRNAi個体のRNA-Seqを行う予定であった。 研究代表者の所属機関異動のため、②の表現型の経時的な調査は行えていない。その一方で、①の遂行は完了しており良好なRNA-Seqの結果がすでに得られている。また、③に関しても、当初は一時点のみで、RNAi個体のRNA-Seqを行う予定であったが、Lasy-Seqと多検体RNA抽出方法の確立が間に合ったため、piwiと同様に16時点の経時的RNA-Seqを行うことができた。また、研究計画になかったDjpiwiC RNAi個体でのDjPiwiB結合piRNAのpiRNA-Seqも実施できており、解析の結果DjPiwiCがDjPiwiB結合piRNAの産生に関わることを示唆する結果を得ている。この仮説の検証のためには、DjPiwiC結合piRNAの配列を決定することが不可欠である。そこで、現状保持しているIPが可能な抗DjPiwiB抗体に加えて、IPが可能な抗DjPiwiA及び抗DjPiwiCモノクローナル抗体を作成する共同研究も開始しており、次年度には抗体が完成予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、経時的なRNA-Seqの解析をメインに標的遺伝子の同定を試みる。テンソル分解やトッピクモデル解析を利用することで、当初実施予定であった表現型の詳細な経時的な評価を行わず、表現系の原因となる遺伝子発現の変化を発見できるのではないかと考えており、これらに手法を用いて実データの解析を進めていく。表現型の原因になる可能性があるDjPiwiBやDjPiwiCにより抑制される標的遺伝子に関しては、各RNAi個体における発現の変化を組織実験によって時空間的に解明していく。また、piwiとのダブルノックダウンを行い、表現型がレスキューされるかも検証していく。 また、抗体の作成も継続して続けていく。IPが可能な抗体が作成できた場合は、IPによてDjPiwiA結合piRNA及びDjPiwiC結合piRNAを取得し、次世代シーケンサーで配列を解読し、DjPiwiCはDjPiwiB結合piRNAの産生に関わるという仮説の検証を行う。また、各PIWIに結合するpiRNAの配列とRNA-Seqで得られる発現変動遺伝子(各PIWIの標的遺伝子の候補)を比較することで、全能性幹細胞の制御に重要なDjPiwiB特異的な標的遺伝子を同定する。また、本年度は先進ゲノム支援を受けプラナリアゲノム解読を行う。ゲノム解読が完了し次第、プラナリアゲノムとpiRNA-Seq、そして、継時RNA-Seqを統合した解析を行いたい。
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Causes of Carryover |
研究実施期間途中に研究代表者の所属機関異動が行われた。そのため、当初の予定通りの研究実施が困難であった。次年度は、得られたDjPiwiタンパク質の標的候補遺伝子の機能解明のために必要な試薬の購入および追加のRNA-Seqの外注費用として繰越予算を使用する予定である。
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