2020 Fiscal Year Research-status Report
マウス初期発生におけるdisallowed genesの解析
Project/Area Number |
19K16151
|
Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
添田 翔 沖縄科学技術大学院大学, 細胞シグナルユニット, 研究員 (40783858)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 初期発生 / 卵細胞 / mRNA制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
CNOT6&6L KOおよび卵細胞特異的CNOT7&8 KOマウスから卵細胞を回収し、そのphenotypeの観察を行なった。ホルモン投与により排卵誘導を行いMII期卵細胞の採卵を試みたところ、CNOT6&6L KO からは正常な卵細胞が得られたがCNOT7&8 KOマウスから回収された卵の多くがMII期に進行していなかった。次にGV期卵細胞を回収しGV期からMII 期への発生をライブイメージングにより観察を行なったところ、CNOT7&8 KO卵細胞では減数第一分裂期で発生が停止する異常が見られた。CNOT7&8 KOで見られた減数第一分裂で発生を停止した卵細胞では、分裂期染色体整列の異常は顕著には見られず、紡錘体形成チェックポイント阻害剤を用いても発生の停止を解除できなかった。続いてERKの活性(正常卵ではMII期に活性化し細胞周期を停止させる働きを持つ)を調べたところ、CNOT7&8 KOではGV期ですでに活性化が始まっていることがわかった。これらのことから、この発生の停止はMII停止機構が早期に機能することによるものであると示唆された。また、卵細胞でERK活性を制御するMOSのmRNA発現量は変化がなかったことから、この発生停止のメカニズムはおそらくmRNAの安定化によるものではなく、poly-A鎖の伸長による翻訳の上昇によるものではないかと考えられる。 GV期のCNOT6&6L KOおよびCNOT7&8 KO卵細胞を回収し、RNA sequencing解析を行なった。この解析の結果、CNOT6&6L KOでは大きな遺伝子発現変動は見られなかったが、CNOT7&8 KO卵細胞において多くの遺伝子で発現量の増加が見られ、mRNAの安定化が起きていることを示唆する結果が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
CNOT6&6L KO、CNOT7&8 KOの発生異常を起こす時期およびその原因をほぼ特定できた。CNOT1 KOの発生異常の時期と同じく一般にmaternal mRNA分解が起こると考えられている時期より早い時期であり、かつCNOT7&8 KOで見られるphenotypeはmaternal mRNA分解の異常ではなくpoly-A鎖長の変化による翻訳制御の異常により引き起こされたものであると考えられた。これまでCCR4-NOT複合体はmaternal mRNAの分解に働くことが示唆されていたが、今回の解析からCCR4-NOT複合体はこれより早期に重要な機能を持つことがわかった。これは想定外の結果であり、本プロジェクトはCCR4-NOT複合体サブユニットのノックアウトマウスを用いてmaternal mRNA分解に着目し解析を行う計画であったがプロジェクトの方向性を再検討し、分解されるべきmRNAに加え、翻訳されるべきではない遺伝子もdisallowed geneと考え、研究期間を延長しこれらの同定、制御機構の解析を進めることとした。 計画通りCNOT6&6L KO、CNOT7&8 KO 卵細胞のRNA sequence解析を行なった。CNOT7&8 KO卵細胞においてmRNAの安定化がみられた。 計画していた実験は研究を進めるうちに必要でなくなったものを除き全て行なったが、上記の理由よりmRNAの分解のみではなく、その翻訳も解析する必要が生じたため計画外ではあるがタンパク質の発現解析の準備を進めた。タンパク質の質量分析を行うための卵細胞の採集を行なった。予備実験を行い必要であれば今後さらに多くの卵細胞を採集する。
|
Strategy for Future Research Activity |
CNOT7&8 KO卵細胞の発生停止のメカニズムに関してmRNAの安定化によるものではなく、poly-A鎖の伸長による翻訳の上昇によるものではないかと考えられる結果が得られた。これをより正確に証明するために、CNOT7&8 KO卵細胞において特にMOS遺伝子に注目しpoly-A鎖長の解析や、RIP-qPCRなどを用いた翻訳活性の解析を行う。これらの解析結果をまとめ、CCR4-NOT複合体のdisallowed genesの翻訳制御への役割の一端を明らかにする。 Disallowed genesの解析に関して想定外の結果が得られたことから研究実施期間を延長しプロジェクトの方向性を再検討する。これまでdisallowed genesに関して分解されるべきmaternal mRNAを候補として解析を進めてきたが、これに加え翻訳されるべきではない遺伝子もdisallowed genesと考え、これらの同定、制御機構の解析を進めることとした。今後の計画としてはCNOT7&8 KO卵細胞を用いてタンパク質質量分析を行い、CNOT7&8 KO卵細胞において発現量が上昇しているものを探索する。発現量の上昇しているタンパク質の同定を行なった後にそれらについて共通するmRNA配列を調べ、制御機構を考察、解析する。またすでに行なっているRNA sequencing解析結果と合わせて、transcriptomeとproteomeのmulti-omics解析を行ったのちにdisallowed genes候補遺伝子についてRIP-qPCRを行い翻訳への影響などを解析する。これらの解析を通して、CCR4-NOT複合体のdisallowed genesの翻訳制御への役割の一般化を行う。
|
Causes of Carryover |
研究を進めた結果、想定外の結果が得られたため当初予定していた実験を一部実施しないことにしたため次年度使用額が生じた。また計画外の実験を行う必要が生じたため研究期間を延長し、その実験のために次年度使用額を使用する。今後の使用計画については、今後の研究の推進方策に詳細を記したが、主にノックアウトマウスから採取した卵細胞をサンプルとしたタンパク質発現解析、RNA解析に用いる。
|