2019 Fiscal Year Research-status Report
Wntシグナルを介した上皮間充織相互作用による気管間充織細胞極性化機構の解明
Project/Area Number |
19K16156
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岸本 圭史 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (70700029)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 気管 / 間充織 / Wnt / 細胞極性 |
Outline of Annual Research Achievements |
発生の過程では、臓器は上皮組織と間充織が互いに種々の成長因子を供給しながら成熟した管腔構造を構築していく。これまでの臓器形成研究の分野では、主に上皮組織の発生に焦点が当てられてきた。一方、間充織組織の役割・形成機構についてはあまり知られていなかった。申請者は、先行研究において、マウス気管では間充織組織の分化・極性化が管腔構造の長さと太さ段階的に、決定づけていることを報告した。また、間充織細胞の極性化にはWnt signalingの活性化が必要であった。本研究課題では、Wnt signalを介した上皮―間充織相互作用による、間充織細胞の放射状極性の制御機構の解明と、多能性幹細胞を使った再構成論的な証明を目的としている。 間充織細胞は上皮組織に向かって配向するため、上皮組織由来のWnt ligandが極性を誘導している可能性が高い。そこで、上皮組織に発現するWntを同定するため、single cell RNA-seqおよびin situ hybridizationによる解析を行った。その結果、複数のWnt ligandが発現していることが分かった。特にWnt7bが上皮組織に強く発現していた。 申請者らはin vitroにおいて間充織極性化の過程を再現するため、多能性幹細胞からの呼吸器上皮ならびに間充織細胞の作製を行った。ヒト及びマウスES細胞に対して、発生の過程において必要な成長因子を連続的に添加することによって、呼吸器上皮および間充織細胞を高効率に誘導することができた。 今後は、Wnt7bを初めとした上皮由来のWnt ligandが間充織極性に与える影響と間充織におけるWnt受容体の同定を行う。また、in vitroの解析では作製した呼吸器上皮細胞と間充織細胞を混合して、間充織細胞極性化の過程を再構築する実験を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、気管をモデルとして、間充織組織の極性化のメカニズムの解明に取り組んだ。先行研究において、間充織組織におけるWnt signalingの活性化が極性化に関与していることを発見している。また間充織は上皮組織に向かって極性化することから、上皮組織由来のWnt ligandが間充織の極性化を誘導していることが推察された。そこでまず、気管上皮組織におけるWnt ligandの発現について網羅的に解析を行った。マウス胎仔におけるscRNAseqの解析においてWnt4, 5a, 5b, 6, 7bが発現していることが分かった。さらに、in situ hybridizationにより、これらの発現パターンについて検討を行った。Wnt4は食道の間充織および気管上皮に弱い発現を示した。Wnt5a, 5b, 6は気管・食道の間充織に低レベルの発現を示した。一方、Wnt7bは気管上皮に強く発現していた。現在、これらのWntの極性化における重要性を調べるため、Wntの分泌が阻害されるShh-Cre, Wntless floxを交配している。 さらに、in vitroにおいて間充織細胞極性化を再現することを目的とし、呼吸器上皮細胞ならびに間充織細胞の分化誘導を試みた。先行研究においてマウスES細胞からの呼吸器上皮細胞の分化誘導には成功している。本年度はヒトES細胞からの分化誘導を行った。種々の分化誘導剤の組み合わせを検討することにより、ヒトES細胞においても同様に、高効率に呼吸器上皮細胞を誘導する系を確立した。さらに、マウスおよびヒトES細胞からの呼吸器間充織の分化誘導に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の検討において、マウス胎仔を用いたin vivoの解析では、気管上皮細胞に発現するWnt ligandを網羅的に解析・同定した。今後は上皮由来のWntが間充織細胞の極性形成に与える影響を解析するため、上皮組織特異的にWntlessを欠損したマウスの間充織極性・平滑筋の配向を調べる。極性に異常が見られた場合、気管上皮に高発現を示したWnt7bに着目し、Wnt7bが間充織極性に与える影響について解析を行う。さらに、間充織おいて発現するWnt受容体の同定を行う。 また、in vitroにおいて、マウスおよびヒトES細胞から呼吸器上皮及び間充織細胞を分化誘導することに成功した。今後は、作成した上皮細胞と間充織細胞を融合した培養系の樹立を試みる。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Single cell transcriptomics reveals a signaling roadmap coordinating endoderm and mesoderm diversification during foregut organogenesis2020
Author(s)
Lu Han, Praneet Chaturvedi, Keishi Kishimoto, Hiroyuki Koike, Talia Nasr, Kentaro Iwasawa, Kirsten Giesbrecht, Phillip C Witcher, Alexandra Eicher, Lauren Haines, Yarim Lee, John M Shannon, Mitsuru Morimoto, James M Wells, Takanori Takebe, Aaron M Zorn
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Journal Title
Biorxiv
Volume: 861781
Pages: -
DOI
Open Access / Int'l Joint Research
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