2020 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子Nanogの新規機能が、Ground stateを誘導する
Project/Area Number |
19K16158
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
岡本 和子 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 特任助教 (40710265)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 1分子計測 / 転写因子 / ES細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
未分化なES細胞において、高発現であり、未分化性の維持に機能するとされる転写因子のひとつであるNanogに着目した1分子計測を前年に引き続いて行った。転写因子の機能を実験的に証明する手法は、発現量・局在解析やChIP-seqなどシークエンス解析が多用されているが、転写因子が核内で実際に動き、標的部位に結合し、その機能を果たす瞬間を数値として記述することを目的とし、1分子計測という手法を選択した。本年は予定どおり、クロマチン構造の変化と標的部位における滞在時間の関係性を計測し、その差の定量解析を行った。クロマチン構造の凝集程度は、薬剤TSAを添加する手法を採用した。Nanogの標的部位への滞在時間は、クロマチン構造の凝集の程度で変化する。この差をさらに明瞭に可視化するため、ユークロマチン化した領域のみを蛍光標識する試薬を同時使用し、標識された部位での滞在時間を計測した。また、標的部位への滞在時間変化を引き起こすシグナル経路の探索を目的とし、2i と呼ばれる阻害剤(MEK-ERK阻害剤とGSK3B 阻害剤)を使用した。実験には、2iを1種ずつ加えることで、MEK-ERK経路またWNT-GSK3B経路のどちらが分子挙動に影響を与えるのかを明らにすることを目指した。阻害剤を添加し培養した細胞核を使用し、1分子計測を行った。加えて、Nanogの他に、転写因子Oct4を標的とした1分子計測を行った。Oct4もまた、未分化維持に関与することが知られる転写因子の一つであり、Nanogと協働することが知られている。Nanogの1分子計測と同様に、Oct4においても、クロマチン構造の凝集の程度による滞在時間の差を計測した。Nanog/Oct4両者のデータと、既に報告されている未分化維持機構の知見を基に、分子挙動からES細胞の未分化維持機構を説明する論文執筆中である。
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