2019 Fiscal Year Research-status Report
Regulatory mechanism of stem cell establishment during axillary bud formation in rice
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19K16160
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田中 若奈 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (10725245)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腋芽メリステム / 幹細胞 / 側枝 / 分げつ / イネ / OSH1 |
Outline of Annual Research Achievements |
以前、私は、TILLERS ABSENT1 (TAB1) 遺伝子が、イネの腋芽分裂組織の形成に必須であることを明らかにしたが(Tanaka et al., 2015)、その形成過程における TAB1 以外の遺伝子の役割については、未解明のことが多い。KNOX 遺伝子ファミリーに属する ORYZA SATIVA HOMEOBOX1(OSH1) 遺伝子は、茎頂分裂組織の形成や未分化状態の維持を担っていることが報告されている(Tsuda et al., 2011)。そこで、本年度は、腋芽形成における OSH1 の役割を明らかにすることを目的として、遺伝学的解析を実施した。 まず、腋芽形成過程における OSH1 の発現パターンを解析した。腋芽形成初期の TAB1 が発現する時期において OSH1 の発現が開始し、その後も維持されることから、腋芽形成初期に未分化細胞が確立し、その後維持されていく様子を明らかにできた。tab1 変異体では、腋芽分裂組織の形成がいろいろな発生段階で阻害される。そこで、tab1 の腋芽形成過程における OSH1 の発現パターンを解析した結果、腋芽形成の初期段階において OSH1 の発現が低下していることが判明した。この結果から、tab1 で見られる腋芽分裂組織の形成不全は、腋芽形成初期の未分化状態の低下が原因であると考えられる。 次に、osh1 変異体の表現型を解析した結果、osh1 では側枝が全く形成されないこと、その原因は、腋芽分裂組織の形成が不全であることが判明した。したがって、OSH1 は、腋芽形成過程においても未分化細胞を維持しており、腋芽分裂組織の形成に必須であると考えられる。さらに、本研究によって、TAB1 の役割の1つは、腋芽形成初期の OSH1 の発現を維持することであることが明らかになった。 本成果を、Cytologia 誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体的にほぼ計画どおりに研究を遂行できている。 前述の OSH1 の機能解析に加えて、腋芽形成における植物ホルモンやメリステム関連遺伝子の役割を明らかにするための機能解析やその準備(交配や植物ホルモンの動態を明らかにするためのレポーターラインの作出等)を、当初の計画通りに行うことができている。また、腋芽幹細胞の新生を制御する新たな因子の同定を目指して行っている、新規突然変異体の解析も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
イネの腋芽形成過程における植物ホルモンシグナルの動態を明らかにするため、これまでに準備したレポーターラインを活用して、オーキシンやサイトカイニンの応答性レポーター遺伝子の発現パターンを解析する。加えて、サイトカイニン合成に関わる遺伝子やサイトカイニンシグナル伝達の調節因子に着目して解析を行うことも計画している。 また、腋芽幹細胞の新生を制御する新たな因子の同定を目指して行っている、新規突然変異体の解析においては、これまでに単離した突然変異体 tab2 の表現型解析および原因遺伝子の単離を行う。できれば次年度中に、tab2 の原因遺伝子を単離したいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由)今年度は、前述の OSH1 の解析が予定していたよりも進んだため、他の解析に優先して実施し、論文執筆まで行った。その結果、腋芽形成に異常を示す新規突然変異体の解析について、予定通りに進まない実験が一部生じた。具体的には、これまでに単離した2つの突然変異体について解析を実施する予定であったが、今年度は tab2 のみについて解析を進めたため、次年度使用額が生じてしまった。
(使用計画)今年度実施する予定であった tab3 の解析を、次年度進める予定である。
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Research Products
(12 results)