2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K16172
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
須崎 大地 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 特任助教 (20757869)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 雌性配偶体 / 細胞運命 / scRNA-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
雌性配偶体は被子植物の繁栄を支える重複受精に不可欠な組織である.形成過程は独特で,1つの細胞が3回の核分裂を経て多核体となった後に細胞化し,それぞれ固有の機能を獲得する.各細胞の運命決定には多核体での核の位置や植物ホルモンの分布の違いが重要であると示唆されているが,その時期や分子実体は明らかでない.本研究では,雌性配偶体の細胞運命決定を担う分子基盤を明らかにするために,シロイヌナズナを用いて顕微細胞操作とライブイメージングを合わせた逆遺伝学的解析をおこなっている. 今年度は,一定の割合で胚珠内の助細胞が卵細胞様に運命転換することが知られている変異体の助細胞と卵細胞に着目した解析を進めた.新学術領域研究(学術研究支援基盤形成)の「先進ゲノム支援」(2021年度第1回目)のサポートを受けて1細胞解析系の構築を試みた.野生型と変異体の卵細胞と助細胞を20細胞程度のバルクサンプルと1細胞ずつのサンプルでRNA-seqを実施した.検出遺伝子数はバルクサンプルでは2万以上であったのに対して,シングルセルでは半分程度であった.野生型と変異体の比較から,興味深いことに既知の卵細胞特異的遺伝子群が変異体の助細胞で発現上昇することが確認できた.変異体の卵細胞においても複数の助細胞特異的な遺伝子の発現上昇が見られた.以上の結果からこれらの遺伝子が細胞運命の転換を担っている可能性が示唆された.また,ATAC-seqも実施したが,サンプル量が不十分だったためか有用な解析結果は得られなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では雌性配偶体の各細胞の運命決定を制御する分子基盤の解明を目指す.1細胞解析をおこなうために,従来の細胞回収系を改変して最適化した.助細胞が卵細胞様に運命転換することが報告されている変異体を使って,助細胞と卵細胞のscRNA-seqを試みた.助細胞,卵細胞ともに1個から解析可能であることが確かめられた.取得したデータから,変異体の助細胞での卵細胞特異的な遺伝子群の発現上昇を見出した.構築した1細胞解析系は多核体期の解析にも応用できる.
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Strategy for Future Research Activity |
1細胞解析のサンプル数を増やして規模を拡大することで,運命転換の様々な時期の発現データを取得する.これによって,運命転換の初期に変動する遺伝子を絞る.また,遺伝学的な操作によって細胞運命を乱したサンプルも交えて候補遺伝子を選抜する.
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Causes of Carryover |
今年度予定されていた国際学会が次年度へ延期になったため旅費分を繰り越した.
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Research Products
(4 results)