2020 Fiscal Year Research-status Report
ショウジョウバエにおける新規な求愛行動様式の獲得に関わる神経メカニズム
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19K16186
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 良弥 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (00839409)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 求愛行動 / 行動進化の神経機構 / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
キイロショウジョウバエと同属のDrosophila subobscuraの雄は求愛する過程で、消化管の内容物を吐き戻し、口移しで雌に与える。このような婚姻贈呈は同属他種にはみられないため、本種において新規に獲得された行動様式だと考えられる。本研究では、婚姻贈呈を示すD. subobscuraを研究に用いることで、新規な求愛行動様式の獲得をもたらす神経メカニズムの解明に挑んだ。 これまでに私たちは、Drosophila subobscuraの婚姻贈呈を含めた求愛行動を制御する脳内約2000個の細胞からなる神経回路を明らかにした。この神経回路は雄特異的転写因子であるfruitlessと呼ばれる遺伝子を発現しており、キイロショウジョウバエにおいても求愛行動の実現に重要な働きをしていることがわかっている。この神経回路の何らかの違いによって求愛行動が変化する可能性が考えられるものの、どういった細胞に・どのような変化が起きることで新規な求愛行動の獲得が生じるのかはわかっていない。 昨年度までに、約2000個の細胞からなる上述の神経回路の中から、婚姻贈呈に関連することが推測される神経細胞群の候補を得た。今年度は、これら候補細胞群の神経活動の操作実験によって、婚姻贈呈を制御する少数の神経細胞群を同定することに成功した。 今後は、同定した神経細胞群がキイロショウジョウバエと比較してどのような種間変化を遂げているのか、機能や形態を比較することで、新規な行動様式の獲得をもたらす神経機構を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Drosophila subobscuraにおいて、婚姻贈呈を制御する神経細胞を同定することに成功し、これらの形態や機能を調べるための遺伝学的手法の整備も完了したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回同定した婚姻贈呈を制御する神経細胞群について、その形態や機能を詳細に調べてキイロショウジョウバエのものと比較する。また、必要に応じてこの細胞群における遺伝子発現を調べて種間で比較する。 これらの取り組みによって、新規な求愛行動の獲得をもたらす神経機構を明らかにする。
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Causes of Carryover |
神経活動の操作実験によって、大きな成果が得られた。そのため、予定していた実験の一部が後ろ倒しされたために次年度使用額が生じた。
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