2019 Fiscal Year Research-status Report
Physiological mechanism underlying annual and lunar spawning of Acropora tenuis
Project/Area Number |
19K16189
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
武方 宏樹 琉球大学, 戦略的研究プロジェクトセンター, 特命助教 (60814192)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | サンゴ / ウスエダミドリイシ / 産卵 / 季節性 / 月周性 / 網羅的遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
沖縄のサンゴ礁を形成する造礁サンゴの一種であるウスエダミドリイシAcropora tenuisは、初夏の満月に一斉に産卵するという、季節と月相に対応した生物リズムを示す。産卵時期を決定するために、ウスエダミドリイシは外環境から季節と月相の情報を読み取り、体内の生理状態を環境と同期させていると考えられるが、その生理機構に関しては依然として不明な点が多い。産卵と関連して発現が変動する遺伝子の探索を目的に、野外からウスエダミドリイシを採集し、環境要因をコントロールできる実験室条件下における飼育実験と、次世代シークエンサを用いた網羅的遺伝子発現解析を行った。 飼育条件下においてサンゴがいつ産卵するかを観察した結果、環境条件をコントロールすることによって飼育水槽の産卵を一ヶ月遅延させることに成功した。このことから、サンゴが産卵の指標としている環境要因について推定することができた。 網羅的遺伝子発現解析では、採択された研究費の予算では新たなサンプルの次世代シークエンサ解析が難しかったため、2017年のサンプルを対象に、2019年に公開されたウスエダミドリイシのゲノムデータを用いて再解析を行った。初めに、各サンプルの遺伝子の発現パターンの親近性を多次元尺度法によって確認した。その結果、群体と採集月に関連した発現パターンを示していることが明らかになった。次に、採集月で発現が有意に変化している遺伝子を探索した。その結果、1149個の遺伝子が見つかった。それらの発現パターンをヒートマップで確認したところ、5月か7月に発現が高くなる遺伝子が顕著に多かった。このことから、産卵前後でサンゴの生理状態が劇的に変化していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
サンゴが産卵の指標としている環境要因を特定するための飼育実験では、本来サンゴが産卵しない月に産卵を誘導することができた。実験計画の段階では、実験室内の飼育環境下では、サンゴが産卵期を逃したと判断し、正常に産卵を行わない可能性が最大の懸念材料であった。本年度の実験で、サンゴが実験室でも産卵することが確認できたことは、本研究を進める上で、非常に大きな進展である。 また、網羅的遺伝子発現解析では、サンゴの生理状態が産卵前後で劇的に変化していることが明らかになった。現在、有意に発現が変動している1149個の遺伝子のうち、5,6月に発現量の高かった生殖腺発達関連遺伝子群と、7月に発現量が高くなったアポトーシス関連遺伝子群に着目している。実験計画の段階では、ある特定の機能を持った遺伝子群を見つけることができるのかを心配していたが、2つの興味深い実験対象をスクリーニングできたことは非常に大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
飼育実験に関して、来年度は同様の実験を再度を行い、結果の再現性を検証する。 また、網羅的遺伝子発現解析の結果から、1149個の遺伝子の発現が産卵前後で有意に発現が変動していた。その中でも、特に生殖腺発達関連遺伝子群と、7月に発現量が高くなったアポトーシス関連遺伝子群に着目し、それらの遺伝子の発現量をqPCRで確認するとともに、発現部位に関しても調べていく予定である。
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